『羽化の時期』
鴉と魔界の街を歩いた。深層部じゃ勿論無いけど。
何かと物騒な魔界において、まだなんとか統制のとれた、
煙鬼さんの完全支配下。
それでも、怪しい奴らが有象無象。
霊力のほうが勝っている僕にとって、魔界の大気は、
決して気分の良いものではなかったが・・・。
どうして、ついてきてしまったんだろう・・。
ふらりと家に帰ってきたと思いきや、
行くぞと、僕の手をとった。
あいかわらず、とても冷たい、死体に握られたようなその感触に、
思わず、身体が硬直し、口に含んだところのコーヒーを、
ゴ…ク…リと、嚥下した。
嫌だと言うかわりに、僅かに仰け反り、じっと睨む。
彼はそんな僕を暫し見つめ、やがて、クツクツと笑いだす。
「お子様が逆らうな。」
ぐぃっと強烈な力で身体ごと、ひっぱり上げられ、なんと僕は、
彼に抱きかかえられてしまったのだ!
「うわ!は、離せ・・!!!」
「ならば、抵抗せずについてこい。」
ニンマリと笑みながら、彼が言う。
僕は、仕方なく、頷き、床になんとか足を着地させた時、
動転してしまった気を静めるためによくやる仕草で、顔にかかった前髪を、
右手で梳くように後ろに撫で付けた。
鴉がこの様子をじっと窺ってる・・。
やがて、クスリと微笑し、
「くくく。おまえもか。」と、呟いた。
え?
今、なんて?
咄嗟に彼の青白い顔を正面から見つめてしまったが、
彼は、首を少し傾げ、その紫色の瞳をおどけた様子で見開き、
そして両肩を、ひょこりと上げるのだった。
賑やかな街の不躾な視線の数々には、正直、辟易した。
僕たちを見て、怯える気配も、居た堪れなかった。
あ。僕たちではなくて、彼をみて・・が、正解なのだろうけども。
彼は、全く意に介さず、歩を進める。
「さてと、ここらで文明の利器の恩恵に与るとしようか。」
なんと、それはデザインは少々おどろおどろしいが、まさに人間界の、
いわゆる自動車。
「燃料は、水素。魔界も環境重視ってやつだろうかな。くくく。
だが、これは私にかかれば、危険きわまりない代物にうって変わるのだが。」
なんて、唇をぺろりと嘗めながら、冗談混じりに言うものだから、
僕は、深いため息をつく。
長い時間、走り続け、そして深層部へと車体ごと空間移動し、
深い森の入り口で、車を乗り捨て、あとは風を切るように森を走り抜ける。
なんとか、僕は彼のあとにつけたが、そろそろ息が切れ始めた。
洞窟。
鬱蒼と茂る蔦で、覆い隠されてはいたが、いかにもな妖気を入り口から洩れ流す、
洞窟。
唐突に吐き気が襲う。
彼が手をひっぱるので、僕は引きずられるようにして後をついていく。
何キロ進んだだろうか。上に下に、地底に。
空間が広がる。怪しく灯る蝋燭の灯り。
荘厳な造りの大きな大理石の椅子に、一人の男の存在。
目は閉じられていた。
呼吸をしているのかしていないのか。
ただ静かにそこに存在していた。
黒く長い見事な髪が足元まで流れていた。
蝋のようなま白き肌と、その身を覆う黒衣。
緩やかに流れるドレープに、気の遠くなるような年月を物語るかのように、
塵芥が堆積していた。
身体から汗が、つぅと流れる。
背にこれもまた漆黒の翼・・・。
「ここに足を踏み入れられるのは、私以外存在しなかったのだが。
どうやら、おまえも認められたようだな。息子。」
不思議だが、彼が何を言っているのか、理解はできた。
彼の原点・・・・。
血族・・・なのだろうと思う・・・。
「僕が・・・認められた・・って・・・。」
「信じられないって顔だな。だが、こうして中に入れたし、見れたわけだ。」
帰り道。
複雑な気分で黙り込む僕に。
「霊気と妖気、併せ持つ、それもまた良しだ。
どちらの世界を中心に生きていくのか、おまえの人生のマスターはおまえ自身さ。」
「それは、わかっているつもりです。」
と、応える僕の頭に、彼の手。
ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜながら、
「おまえ、近頃、めっきり自信を無くしておろう?」
え!?
「くくく。あれは邪神だ。凄いぞ。自慢しろ。」
「じゃ、邪神!!??」
「魔界すら破滅させる。」
「ま、まさか・・!」
「まぁ、だから何だという話しだが。とりあえず。
そろそろ、おまえに教えておいてやろうとな。親心だ。」
彼の親心とやらに、僕の繊細な神経は、また悲鳴を上げだすことになったのだが、
それでも・・。
希に危険な仕事に就く時。
どうしたことか、自分でもわからぬ力が湧いてきて、
周囲の助けを借りるということは、本当に少なくなったのだった。
***
と言う訳で、サーフさんに強引にリク権を押し付けた私です。(最低)
そしたら何と、リク内容を小説にして下さった何とも粋なサーフさん!!!
上の小説もサーフさんが書いて下さいましたvvvvv
寧ろ目玉はこちらの小説、私の絵は無視して下さい。
肌の色がやたらと健康的なのは夕焼けに照らされてるからです。実際は死体色です。
と言いますか、小説、無断です。すみませんんん!!!!!!
小瑠璃を強く、かっこよくしてくれたサーフさんのサイトへはリンクよりGOGO!!
背景をお借りしたサイトさんはコチラ。
おまけ