訳がわからない。



男の童の様な寝息を後頭部に受けながら。

己の股から、破瓜なる血を垂れ流しながら。



男の腕に包まれた儘、兎に角そう思った。








北条が討ち取られ、私の敗北が確定したこの日。

主を失い、それなりの処置を予想していた私であるが。

それはこの日、主を討ち取った軍の大将である男により、裏切られた。


男は不思議な事を言う。

更に言えば、理解不能な事を多々言う。


まだ昼から今の丑三つまでしか時間を共にしていないが。

それでも、この男は、理解の出来ぬ事を言う。


まず、私が欲しいと言った。

戦場で私の兜を剥ぎ取り、竜の如き獰猛さで私の口を噛み奪った後で。

何やら、風魔の名でなく、私の忍びとしての腕ではなく。

この男は何とも奇妙な事に、私と言う存在を求めていると言う。



全くもって、理解の出来ぬ。



更に驚かされたのは、その後。



今から一刻半程前の事である。






この男は、私に身体を開けと言ったのだ。






いよいよ、わからぬ。

はて、何の為であろうか。と。

普段は大して使わぬ頭を無理矢理叩き起こして考えた。


・・・血を残す為であろうか。


何と、忍びである私にその任を背負えと言うのか。

いつ命を落とすとも限らぬ、主にただ従い血で汚れる私に。
けれど、それ以外に、私に身体を開かせる訳が見当たらない。
だが、相手を間違えてはいないか。
先まで敵で。命を狙い。果ては捕虜同然に攫われた素性も知らぬ忍びに。
得体の知れぬ女に、何故その任を渡そうと言うのか。



声の無い私は、それを問う事の叶わない儘、男に身体を暴かれた。



しかし、結局男は私の中に種を残さず。

ただ私の身体を喰らい尽くすと、満足した様に眠りについてしまったのだ。

私が未通であった事に、甚く歓喜の念を滲ませながら。


何がしたいのか。子を残さぬこの行為に、男は何の意味を見出すのか。
子を孕めと言われても、それはそれで困るのだが。
それでも、その意味を成さぬのであれば。

この肌を重ねる行為は、何を意味するのか。

生憎と私には、まるで理解が及ばなかった。







”身体を開く”と言う任を全うしたのだからと早急にその場を去ろうとする私を、男は私には無い言葉で繋ぎ止めた。


朝まで傍を離れてはならぬ。


命ならば、従うまで。


一糸纏わぬこの姿では、現主たるこの男を守るに、些か不安ではあるが。
それでも男が命を下したのだから、私は朝までこの男の傍から離れる事は許されない。
そうでなくとも、男の逞しい両腕が、私の身体を拘束して自由を奪っている。
男の体温に、腕の重みに、忍びとしてあるまじき安堵と眠気を覚え、不覚にも薄い眠りへと意識を浸けた。




寸前に、思い出す。




この隻眼の男。

私を欲し、私を奪ったこの男。

そう言えば、何処か見覚えがある。


何処で見たか。

恐らく、戦の最中ではないだろう。


けれど、この男の眼。

熱く滾る、それでも静かな炎を宿す左の眼。

まるで獲物全てを喰らい離さぬ様な、竜の眼。


その眼には、随分と、覚えがあった。



何処だったか。



少し考えれば思い出せそうだと言った時に、遂に意識はプツリと途絶えた。










ふと、意識を取り戻したのは、そろそろ夜が終わりを告げようと言う時。

まだ日も昇らぬ内ではあるが、半刻もせぬ内に朝が来る。


ならば、私はもうこの男の傍から離れても良いのであろう。


実際男は、私を解放せぬ儘ではあるが、眠りに落ちている。


今なら抜け出せる。




そう思うたのに、私の身体は、男の拘束を解く事をしなかった。




・・・朝はまだ、来てはいない。




何故か唐突に言い訳めいた言葉が脳裏に浮かび、首を傾げる。



私は何に対して誤魔化しをしたのだ。



男の腕をそのままに。

男の体温を肌に受けながら。



ああ、自身すらも、訳がわからないと。



理解不能な行動に、暫し、頭を捻った。


























END.


理解できない事ばかり。明らかに脳味噌のキャパオーバー。
小太郎は普段頭使いません。本能で行動してます。野生動物。
男に惚れる所か人とまともなコミュニケーションすら取った事無い筈。
小太郎は戦闘専門なのでそう言ったくのいちの訓練はしてません。
よって処女。ファーストキスの次はバージンを竜に奪われた。次は何を奪われるか。