「雨だな」
「雨ですねぇ・・・」



まだ電気をつけるには早い時間。

暗くなった室内には、激しい雨の音と俺達の声。



窓を見遣れば、無数に打ち付ける水滴。




今言った通りの、大雨だ。




「・・・流石にこんな天気じゃ、ピクニックは無理だな」
「そうですね。さくらさん達も残念がっていました」


本当なら今日は、さくらも大道寺も交えたピクニックだった。


あいつ等は本当楽しみにしていたみたいだし。

何処に行こうかとか、ここを見たいだとか、色々計画を立てていた。

電話で中止の連絡が来た時には、この空よりもどんよりと曇った声で。

俺も、コイツの弁当を楽しみにしていた訳だから、少し残念でもある。



・・・けど。



「・・・ねぇ、李君は?」
「俺は・・・別に、雨でも良い」
「おや、何故?」


少し肌寒くなり、俺の膝に座る柊沢を抱き寄せる。


密着した体から伝わる体温。

細くて柔らかい身体。

鼻先を掠める甘い香り。


雨の気配に混じって、何とも言えない気持ちになる。


「ピクニック、楽しみだったのでは?」
「楽しみは楽しみだったけど・・・」


サラサラの髪にキスをして、そのまま鼻先を埋める。

柊沢がくすぐったそうに笑った。



「お前と2人きりになれるから、雨も悪くない」



そう伝えると、柊沢は一瞬だけキョトンとして、また笑った。

優しい微笑みで、俺を見つめてくる。


「嬉しいですね。そう考えると、雨も良い物ですね」
「だろ?」
「ん・・・ね、李君」


身体を抱いていた腕を服の内側に滑らせると、柊沢が身じろぐ。

吸い付く様な、白くて滑らかな肌を撫で上げ、爪の先で軽く擽る。


するとコイツは、一瞬鼻に掛かった声を少し漏らしてから、甘えた声で呼んで来た。


「何だ」
「・・・雨降ると、寒いですね」
「そうだな」
「ええ、凍えてしまいそうです」


密着していた身体を更にすり寄せ、俺の首筋に顔をくっつける。

柔らかい唇と、艶やかな髪の毛が当たって、こそばゆい。



「だから、あっためて下さいますか?」



雨の音に掻き消されそうな、細く小さな声。

それでも、確実に俺に聞こえる様に、耳元で甘く囁く。



それに言葉で返すでもなく、服の内側で遊んでいた手で、代わりの返答。



暫くすると、雨の音が聞こえなくなるくらい、コイツの甘い声が部屋に響いた。



























END.

雨が酷かった日に書いた。寒かったしね。
だからイチャイチャさせたかっただけです。甘ったるい。
雨だろうと晴れだろうと雪だろうとイチャイチャしてますが。
エリオル君は雨が似合う気がする。君達もベッドで濡れてしまえば良い。