「大体、何よその中途半端な格好!!
 もう日本は平安時代終わってんのよぉ!!?」
「煩いわ!!俺の拘りと言うものがある!!!」
「その拘りに向けるエネルギー、ちょっとは性格改善に向けたらどぉ!!?」
「貴様こそ、その無駄な妖力を脳味噌にでも回すんだな!!!」



アレから5分程経つが、まだ口喧嘩が続いている。

今回の第三ラウンドは、長い。



『えー・・・そろそろ5分が経過しようとしています。
 しかし、死々若丸選手そしてつばき選手の口喧嘩。
 一向に終わる気配を見せませんねぇ・・・』


一体いつまで続くんだ。

と、幽助が呆れ出した頃、漸く新しい動きを見せたのは、つばきの方だった。




「ん?」




ピクッと反応し、振り返る。

カメラも一緒にそちらを見るが、何も映っていない。


「・・・お兄ちゃんの気配がする・・・」
「・・・・貴様の兄だと?」
「そうよ、お兄ちゃん」


つばきとはそれなりに離れた場所にいる筈の小瑠璃。


だが、少しの差でつばきの感知出来る範囲に入ったのか、彼女は素早く反応を見せる。


そして先程までしまっていた鋤を突如取り出すと、やおらそれに跨った。



「おい貴様!」
「何よぅ」
「敵前逃亡か?ふざけた事を・・・!」
「アンタなんか敵にもなんないんだから、別に良いじゃない」
「何だとォ!!?」
「アンタよりお兄ちゃんの方が気になるのー。じゃあねん」



つばきが死々若丸にウインクを1つ飛ばすと、そのまま猛スピードで宙を突き抜ける。



「なっ・・・・ま、待て!!」



一瞬、呆気に取られる。


だがすぐに青筋を額に浮かべながら、彼女の小さくなった後姿を追い駆け始めた。



またしても、予想外の展開。



『く、口喧嘩が終了したと思ったら、次は何と追いかけっこが始まってしまいました!!
 コレは、本当に平和な戦いとなっておりますねぇ・・・。
 
 ところで先程つばき選手が、お兄さんである小瑠璃選手の気配を察知した模様。
 そちらを追って見てみましょう!』


小兎の合図に、また、カメラが変わる。



そこに映されたのは勿論、小瑠璃の姿。










「何だか・・・増えている様な気がしますね・・・」


小瑠璃が、手をパンパンと叩きながら、溜息を吐く。

元々自分の相手は50だった筈だが、何だか、10名程、増えている。


実際、狗守鬼の対戦相手とつばきの対戦相手。

その数名が、小瑠璃の方へと流れて来たのだが。


自分は割りと残り物処理が回って来る。

貧乏クジを引かされる性格だと言うのは自覚しているが、それでも流石に面倒だ。



「それにしても・・・先程から、何だか嫌な予感が・・・」



小瑠璃が、冷や汗を掻きながら、そう呟く。


嫌な予感。


恐らくは、妹が関係しているのであろう。



生憎、自分は意外と、勘が鋭い。



以前それを狗守鬼に言ったら、『流石鳥類だね』と馬鹿にされた。

まぁ、そんな苦い思い出はさて置き、その嫌な予感は徐々に近づいて来る。









「お兄ーーーちゃーーーーん!!!!!」









ドンッ!!!


と、勢い良く突進して来た、空色の物体。



小瑠璃がその姿を辛うじて認めたと同時に、それは渾身の限り体当たりをかまして来た。



凄まじい衝撃と共に、細い小瑠璃の体が吹き飛ぶ。



「ッ!!!?」
「お兄ちゃーーーん!!調子はどぉー!!?」



かなりの距離を吹き飛ばされ、思い切り頭から地面に激突した。

しかし、両腕でしっかり妹を抱き留めている所を見ると、一応兄としての意地があったらしい。

妹が地面と接触しない様、頭を庇ってやっている。


だが、2人分の重みを支えた自分は、相当なダメージを喰らった様子。


その証拠に、小瑠璃はすぐ起き上がる事が出来ない。



『お、おや・・・小瑠璃選手・・・。
 妹のつばき選手の突撃を一身に受け、相当なダメージを被った様子!
 まさか対戦者ではなく妹さんに攻撃を喰らうなど、思ってもみなかった事でしょう。
 えー・・・小瑠璃選手、大丈夫でしょうか・・・?』

小兎が心配そうにモニターを見る。
相当な勢いで頭を打っているが・・・割れてはいないだろうか。

「・・・アイツも、苦労してんなぁ・・・」

幽助が、呆れた様に言う。
小瑠璃は昔から、妹や父に振り回されていた。
今でもそれは変わらないのだなと、軽く、同情。

「あれはぼたんの血だろうな」
「そりゃそうだろ・・・鴉があんな、他人に会う度に突進する様な可愛い性格してねーだろ」
「・・・不気味過ぎるな」
「いや、誰も想像しろとは言ってねーけど・・・」

律儀に想像した蔵馬に、幽助は更に呆れ果てた様子で、冷静に突っ込んでおいた。





「あぁん、お兄ちゃん、大丈夫ぅ?」
「・・・ああ・・・大丈夫ですよ・・・・・・」


心配そうに覗き込んで来るつばきに、小瑠璃は顔を顰めつつ返す。

怒らない所を見ると、どうやら慣れっこらしい。


「流石お兄ちゃん、打たれ強いわぁ」
「つばき・・・お前も相変わらず元気な子ですねぇ・・・」
「やぁねぇ、それがあたしの取り柄じゃなぁい」
「・・・・そうですね・・・・」

否定はしない。
元気がなくなったら、つばきではない。

わかってはいるのだが・・・少しくらいは淑やかになって欲しいのも、事実。

だがそれは、無駄な願いだとわかっている。
なので、もう、疾うの昔に諦めた。


「それよりつばき・・・どうしてここに?お前のノルマは?」
「殆どフッ飛ばしちゃったわよぉ。それに、残りは逃げちゃったし」
「・・・・なるほど、それが、僕の所に回って来ているんですね・・・・」

やはり、増えているのは錯覚ではなかった。

そう、溜息を吐く。
つばきはそんな兄を、小動物の様に見つめてみる。
小首を傾げている所を見ると、まるでわかっていないらしい。

「お兄ちゃん?」
「え?・・・いえ、何でも・・・」
「そぉ?・・・それにしてもお兄ちゃん。お兄ちゃんのトコ、相手少ないわねぇ」
「?そうでもない・・・・・・あれ?」


つばきの言葉に、小瑠璃はまさかと振り返る。




だが、その言葉通り、誰もいない。




何故だ。と一瞬思案するが、すぐ目の前に答えはあった。


「・・・つばきが怖かったんですかね」
「何よそれぇ!!」
「また、お前が爆撃をして来るかと思ったんじゃ、無いですか?」


先程残っていたのは、つばきの方から流れて来た対戦者達。

折角逃げて来たのに、またしてもつばきが現れたから、それは慌てて逃げたのだろう。

小瑠璃は、ガクリと項垂れる。


「つばき・・・お前、一体何をしたんです?」
「ちょっと爆弾で吹っ飛ばしただけじゃなぁい!」
「はぁ・・・まぁ、構いませんがね」


頬を膨らませて拗ねる妹に、小瑠璃は最早何も言う気が起きない。

いつもの事だ。と無理矢理己を納得させ、去って行った対戦者達の行方を考える。


自分とつばきの所を除いたら、後は3つ。


狗守鬼か、花龍か、それとも、志保利か。


今他のメンバーがどの様な状況下に置かれているのか、見当もつかないが・・・。




恐らく、行くとしたなら、置き去りにされている志保利の所。




コレは不味いな。と、小瑠璃が眉間に皺を寄せる。

そしてトレースアイを出して遊び始めたつばきに、志保利の所へ向かおうと声を掛け様とした、その時。








「小娘ぇ!!!」








空気を裂かんばかりの、怒声。


その声につばきはキョトンと振り向き


小瑠璃は、まだ何かやらかしていたのか・・・と、思わず頭を抱えた。




「ん?あら、牛若丸じゃなぁい」
「死々若丸だと何度訂正すれば覚えるんだ貴様!!」
「良いじゃない、あだ名だと思いなさいよあだ名だとォ!!」
「そんなあだ名があって堪るか!!」
「何でよ!少なくとも死々若丸とか言う物騒な名前より良いと思わなぁい!!?」
「何が物騒だ!!貴様こそ、どうせロクでもない名なのだろうよ!!」
「失礼ねぇ!!あたしの名前、知らないの!!?」
「興味すら無いわ!!!」
「腹立つぅ〜〜!!!なら、嫌がらせに教えてあげるわ!!!
 あたしはつばきよつ・ば・き!!!どう!!?あたしにピッタリな名前でしょぉ!!?」
「フン!!名前負けとは言った物だな!!!」
「なぁんですってぇ!!?アンタだって死ぬとかおまるとかついてるじゃない!!!」
「おまるではないわ馬鹿者!!!」
「入ってるじゃない!!それをちょっと可愛くしてみただけよ!!馬鹿!!!」
「馬鹿は貴様だと何度言わせる!!!大体、ちっとも可愛くなぞなっておらんわ!!!」


突如目の前で繰り広げられた、口喧嘩。


先程までの事情なぞ一切知らない小瑠璃は、思わず呆然と立ち尽くした。



「・・・・な、何してるんですか・・・・」



そして数瞬の間の後、漸くの思いで、一言発する。


その控え目な声に、つばきと死々若丸はグルッと鋭い瞳で振り向いた。


「うわ!?」
「ちょっとぉ!お兄ちゃんも牛若丸に何とか言ってやってよぉ!!」
「死々若丸だと言っているだろう!!それより貴様、この小娘の兄だな!!?」
「は、はい」
「貴様、一体妹にどう言う教育を施して来たんだ!!!」
「い、いや・・・性格の大部分は、父に影響されている子なので・・・」

詰め寄って来る2人に、小瑠璃は慌てて両手で制す。
そしてさり気無く、妹の性格を父の所為にしておいた。

「何よ何よぉ!大体、細かいのよ牛若丸はぁ!!!」
「最早訂正するのも億劫になったわ!!馬鹿の相手は疲れる!!!」
「何ですってぇ!?ちょっとお兄ちゃん!!可愛い可愛い妹が馬鹿扱いされてるのよぉ!?
 それにね、さっきからあたしの事低脳だとかノドンとか酷い事ばぁっか言うの!!!」
「ノドンではない、魯鈍だ!!!この能無し女!!!!」
「大して変わらないじゃないの!!!」
「大違いだ愚鈍娘!!!!」
「また難しい言葉使ってぇ!!!わかんないって言ってるじゃない!!!」
「だから先から辞書を引けと口を酸っぱくして言っているんだ!!!!」
「あ、あぁ・・・わかりました、わかりましたから、落ち着いて下さい!」


小瑠璃が、2人の間に割って入る。


「えぇ・・・死々若丸さん、で宜しいでしょうか」
「何だ」
「えっと・・・妹がご迷惑をお掛け致しまして・・・本当に申し訳御座いません」
「ちょっとちょっとぉ!!どうしてお兄ちゃんが謝るのよぉ!!」
「ホラ、良いから!どうせ、お前が切っ掛けなんでしょう。
 あまり、騒ぎを大きくする物じゃありませんよ」


小瑠璃の思考はこうだ。

先程から妹は、彼の名前をわざと間違えて呼んでいる。

恐らく、最初にそう呼んだ為、気に入って間違え続けているのだろう。


そして、偶々、相手が挑発に乗り易いタイプだった様で・・・


ここまで喧嘩が発展したのだろう。と。



的確な推測である。



素直に謝罪をして来た小瑠璃に、死々若丸はほぅ。と感心した様な声を上げた。


「なる程・・・妹とは違って、兄は中々利口な様だ」
「何ですってぇ!!?」
「コラつばき!」
「むぅぅ〜〜〜っ」
「フン、兄の前では、何も言えぬか・・・。まぁ、貴様の兄に免じて、今回は許してやろう」
「ふーんだ。何よ何よぉ、偉そうにしちゃって!」
「何か言ったか・・・!?」
「ああもう!挑発するのはお止しなさい!」


止めても止めても始まる口喧嘩に、小瑠璃は頭痛を覚える。


一々挑発する妹も悪いが、どうか、相手もサラリと流してやって欲しい。

それが、本音だ。


「全く・・・」
「何よ何よぉ。お兄ちゃんてば、牛若丸の事ばっかり庇っちゃってぇ」
「コレは、お前の方に非があるからですよ」
「ふーんだ。知らないもーん」

プリプリと可愛らしく怒るつばき。
小瑠璃はそんな妹に苦笑いしつつ、死々若丸に視線を向ける。

「ところで・・・ここにいらっしゃると言う事は、対戦者の方・・・ですよね?」
「そうだ。・・・・まぁ、偶々近くにいたのが、そこの頭の足りない女だったのだがな・・・」
「頭が足りないですってぇ!!?アンタだって性格の良さが足りてないわよ!!」
「そんな使い方があるか馬鹿者!!物事に対する理解が出来ていないのか!!
 その辺りは全く持って、貴様の父と同じだな!!!」
「あぁーー!!パパに失礼な事言ったわねぇ!!もー怒った!謝っても許してやんないんだからぁ!!!」


死々若丸の一言に、つばきが両腕を振り上げて声を張り上げる。


「フン、で?何をしようと?」
「ふーんだ!覚悟しなさいよ!!」


つばきがまだ普段の口調で怒っているので、大した事は無いだろうと、小瑠璃は傍観を決め込んだ。

何をするのかも、大体想像はつく。





「コレだぁ!喰らえっ!!」





つばきが叫ぶ。



だが、暫し待って見ても、何も変化が無い。




一応構えていた死々若丸は、予想外の出来事に、気を抜く。




「ハッ、何がしたかったんだ?まさか、失敗か?」
「ふふーん。やっぱ、アンタの方が馬鹿じゃなぁい!」
「何だと!?」
「よぉぉーっく、眼を凝らして、アンタの周りを見て御覧なさい!!」
「・・・?!」


つばきの勝ち誇った様な笑みに、死々若丸が自分の周りを見遣る。




途端、顔色が変わった。




「き、貴様・・・!」
「べーっだ!あたしの事怒らせた罰なんだからぁ!!」
「・・・・・・・はぁ」




舌を出すつばきに、小瑠璃が疲れた様な溜息を漏らす。


やっぱり、やったか・・・と、予想通りの成り行きに。




「良い事!?ちょっとでも動いたら、その時点でドカーン!だからね!!」
「ふざけた真似を・・・!!」
「ふーん。動けない奴に何言われたって、痛くも痒くもないもーん」


つばきが起こした、その行動。


彼女の父も良く使っていた、特殊爆弾だ。


まるで獲物を囲む様に、発光する爆弾が、死々若丸を覆っている。



少しでも触れれば、その時点で体が吹き飛ばされるだろう。



「ま、威力は弱めてあげてるから、感謝してよねーっ」
「何だと・・・貴様・・・!」
「この余興が終わる頃には消えてるわよ、それまで大人しく突っ立っててよね!!」


気が済んだのか、花の様な笑顔を浮かべ、小瑠璃へと走り寄る。

そして、そのまま、軽いタックルを喰らわせた。


すっかり油断していた小瑠璃は、グラリと揺らめく。


「っ・・・・とっと・・・・」
「さぁて、どうするぅ?お兄ちゃん。暇になっちゃったわよぉ?」
「つばき・・・それが、生憎暇でも無いんですよ」
「??」


つばきの一言に、小瑠璃が神妙な面持ちで言う。

それに、彼女は首を傾げる事で問い掛けた。


「恐らく、先程逃げた対戦者達は、動けない志保利さんの所へ向かったのでしょう。
 花龍さんの結界も、そろそろ限界である筈。急いで彼女の所へ向かわなくては」
「そうだ!志保利ちゃん、1人なんだった!!大変!!!」

小瑠璃の言葉につばきが叫ぶ。

そして先程小瑠璃に体当たりした際、放置していた鋤を手に取り、跨った。

「ホラホラ!お兄ちゃんも早く!!」
「ええ、わかっていますよ」

つばきに急かされ、小瑠璃も己の鋤を具現化し、静かに乗り込む。

「じゃあねん牛若丸ぅ。また、機会があったら遊ぼうね〜♪」
「誰が遊ぶか!!っく、このじゃじゃ馬が・・・!!」
「ぷっぷー。知〜らない!」


最後にもう一度だけ舌を出し、つばきが先に地を蹴る。


「えー・・・妹がご迷惑をお掛けしました・・・その爆弾は、多分、暫く解けないと思うので・・・
 一か八か、当たってみるのも、良いかも知れません」
「貴様・・・本気で言っているのか・・・?」
「あ、あはは・・・しかし、それ以外に方法がありませんから・・・っと、それでは、僕も急ぐので・・・」


小瑠璃が、逃げる様にしてつばきの後を追う。


残された死々若丸は、少しの間の後、苦々しげに呟いた。




「チッ・・・あの小娘・・・覚えておけ・・・!!」








『えー・・・死々若丸選手とつばき選手の戦い。
 小瑠璃選手の介入も御座いましたが、一先ず、終結した模様。
 これは、つばき選手に白星。と言う事でしょうか。
 いや、何とも平和的なバトルで御座いました!

 さぁ、それより、今気になるのは小瑠璃選手の言葉ですね。
 中央に残された志保利選手が、危険な状況に晒されているとの事!!
 コレは急を要する事態!!
 それでは、再び志保利選手へとカメラを戻してみましょう!!』



一番初めに映し出されていた志保利。


今彼女はどうなっているのかと、蔵馬が身を乗り出してモニターに見入る。





「・・・!!志保利!!」





途端、思わず上げた、鋭い声。



見ると、志保利の周りには、最初と比べ物にならぬ程、大勢の妖怪達が群がっていた。



狗守鬼やつばきの所から逃げて来たのだろう。

それは、一心に、彼女を守る結界を破壊しようとしている。



これには、蔵馬も蒼褪めた。



『あぁぁ!!み、皆様!!大変な事態が発生しております!!!
 良くご覧下さい!志保利選手を守っている、花龍選手の結界!!!
 それに、何と、亀裂が走っております・・!!!
 流石に長時間、遠距離で結界を張る事は、これ以上は厳しい!!
 加えて花龍選手は、先程凍矢選手との激戦で、満身創痍と言った状態!!!
 さぁ!!一体どうなってしまうのかぁー!!!!』


小兎の言葉通り、花龍の結界は、最早限界へと達していた。


その証拠に、幾つもの皹が入り、いつ割れるとも知れない状況にある。



「お、おい!こ、今度はお前かよ!!!」



幽助が、小兎を抱えたままの状態で飛び退く。

飛影の殺気が収まったと思ったら、今度は蔵馬の妖気。

コイツ等、意外と直情的だよなぁ・・・と、幽助は妙に冷静な頭で考えてみる。


だが、今は本当に、志保利の命が危険にさらされているのだ。


焦る気持ちは、勿論わかる。



『先程、志保利選手の元へと向かった小瑠璃選手とつばき選手!
 しかし、彼等のいた場所は、恐ろしく離れた最東端!!!
 恐らく、到着するのはまだ少々先の筈!!!!
 さぁ!!1人取り残されている幼気な人間の少女!!生き残る術はあるのかーー!!!』
「だっ、だから、そう言う実況はするんじゃねーって!!」
「し、しかし本当の事なんですよぉっ」
「わ、わかってっけど・・・・ってうわぁ!!!?」
「きゃあぁぁっ!!!」


慌てる幽助と小兎を、突如何かが襲う。


冷静に見てみると、それは、魔界植物。


ザァっと血の気の引いた顔で、幽助が蔵馬に怒鳴った。


「ばっ、馬鹿野郎!!危ねぇだろぉがぁ!!!」
「・・・・・・・・」

蔵馬は答えない。

どうやら魔界植物の発生は無意識だったらしく、最早、心ここに在らずの状態。

「チッ・・・全く、危ない野郎だぜ・・・」
「テメェ人の事言えんのか!!」

冷ややかに呟いた飛影に、幽助ががなる。

先程、この実況席で黒龍波を撃とうとした危険人物は、他ならぬ彼である。



『えっ・・・えぇ・・・さぁ、志保利選手は・・・・あぁぁあ!!!
 み、皆様!!大変です!!
 し、志保利選手を守っている結界が、今にも・・・!!
 ・・・あっ・・・あ!!』





小兎がそう言った、瞬間。







パリン。と、薄い硝子が割れる様な音が、モニターから響いた。





























NEXT


さぁ、次回で本編ラストです!(あとおまけが2話)