カサリと、胸に抱えた紙袋が音を立てる。

茶色く安い紙に入れられた果物が、窮屈そうにぶつかっていた。


それを見て、リンクがくすりと笑う。


苺が安かったから、つい買ってしまった。

大粒の、真っ赤で甘そうな苺。

そして苺を見て、『ストロベリーサンデー』と言う食べ物を思い出したのだ。

こちらに来て初めて知った食べ物。

一度食べさせて貰ったが、甘酸っぱくて美味しい物だったのを覚えている。

だから、自分でもちょっと作ってみようと、他の材料も買ってしまったのだ。


その結果、こんなにもたくさんの買い物になってしまったが。


上手く作れるだろうか。

レシピも無いし、記憶を頼りに作るしかない。

自分で食べる分には多少味が悪くとも構わないが、今回はそうも行かない。

恐らく作ったそれは、彼が食べるだろう。


ストロベリーサンデーが好きな、銀髪の彼が。



上手く作れなかったら、小言を言われてしまいそうだ。



リンクがそう苦笑いしたその時、ふっと嫌な風が顔を掠めた。

生温く、随分と殺気の香り漂うその風。

不吉な風に、思わず足が止まる。




だが足音は、まだ続いて聞こえていた。




「!」


振り向くと、そこには異形の化け物が数匹。

大きな鎌を持つ、まるで死神の様なその姿。

一瞬戸惑うが、すぐにそれが何なのかを理解した。


彼が以前、話をしてくれた。




この世界には、悪魔と言う魔物が存在すると。




自身も半分悪魔であると、笑って言っていた彼。

その彼の言葉が脳裏に過ぎり、咄嗟に踵を返し走り出す。

自分も、ハイラルにいた時には、多くのモンスターを相手にした。

それこそ、身の丈の何倍もある怪物とも対峙した事がある。

今目の前にいた悪魔達よりも、何倍も大きな。


だが、悪魔と言う存在の対処法を、リンクは知らない。

今は買い物に来ただけだった為、剣も背負っていない。


兎に角、彼の元へ。


そう考え、細い足で地を蹴るリンクの後を、数匹の悪魔が風の様について来る。

その異様な容貌に少々恐怖を感じながら、人気の無い路地を通り、一目散に無名の店を目指した。












「ダンテさん!!・・・わっ!?」


まだ名の無い店のドアを、片手で思い切り開く。

その瞬間、ガッと横から彼が現れ、リンクの肩を強く抱き寄せて来た。

突然の事に、彼女の眼が見開き、じっとダンテの顔を見る。


だがそれよりも気になったのは。

自分を追って来た悪魔達と同じ魔物が、店内にワラワラ沸いている事。

先程街で遭遇した魔物達は自分を見失っていた筈。

と言う事は、ここにいる悪魔は先程とは別の存在らしい。

やはり彼の元にも来ていたのかと、リンクは彼に抱かれたまま冷静に考えた。



その思考を破ったのは、激しい銃声。



ダンテがリンクを抱いたまま、楽しむかの様に銃を乱射している。


「あぁ・・・お、お店が・・・お掃除が・・・」


リンクの小さい声が、銃声に掻き消される。

この後、店の掃除をしなければならないのだろうか。

だとしたらストロベリーサンデーを作っている暇はない、それで1日が終わる。


家主自身の手で崩壊していく店を不安そうな顔で見ていると、ダンテが軽く笑って彼女を見遣った。

そのまま、自然な動作で柔らかいキスを1つ落とす。


「よぉ、遅かったな。コッチは客が団体で来てな。対応に追われてたんだぜ?」
「そ、そうですか・・・あ、あの、これは一体・・・」
「話は後だ。まずは団体様にお引取り願わないとな」


ダンテがリンクの肩を抱いたまま銃を再び構える。

だがふと、彼女の持つ紙袋に眼が行ったのか、それに視線を送りつつ問う。


「所でリンク、何買って来たんだ?」
「あ、えっと、”ストロベリーサンデー”を作ろうと思って・・・」
「ヒュウ、良いね。なら先にコイツ等をとっとと料理してやらねぇとな」


そう言いながら、白黒の銃で悪魔を仕留めていくダンテ。

リンクも彼の手からスルリと逃れると、紙袋を端に置き、代わりに愛用の剣を手に取った。

ハイラルにいる時から使っている、愛剣。


駆け寄って来たダンテの背に自身の背を合わせ、剣を構える。


「さて、始めるとするか」
「え、ええ、頑張ります」


リンクの言葉に、ダンテが笑う。



ジュークボックスの音楽が、戦闘の合図をするかの様に、激しいリズムを奏で始めた。



























END.


デビルメイクライ3のOP場面。
リンクさんがいたらこんな感じかなぁ・・・と。
結局この後、苺の入った紙袋も、ピザと同じ運命を辿ります。
んで、ダンテさんと一緒に、リンクさんもお兄ちゃん開催のパーティーへ。

しかし、短い話だった。(凄く感心した顔で)