が、胸にある氷泪石を摘んでみる。
雪菜の氷泪石。
最後、人間達に襲われた時、雪菜が零した涙だ。
他の氷泪石は持っていかれてしまったが、この1つだけは自分の所に残っていた。
・・・まぁ、大切な物だと言えなくも無いと、は捻くれて思った。
だが。と。
少し、気になる事がある。
氷泪石。
雪菜の持っている氷泪石は、母の涙だと言う。
その、母の氷泪石。
その氷泪石は、水晶の様に、言うなれば水の色の様に、輝いている。
だが、雪菜の氷泪石はどうだ。
まるでミルクの様な、淡い乳白色。
コレは何の違いなんだと、首を傾げる。
血の気の無い指先に挟まれた氷泪石が、ふわりと光った。
「雪菜」
が、冷たい茶を持って現れた雪菜に問う。
「なぁに?」
雪菜は、その茶をに渡しながら、にこやかに返した。
「お前の氷泪石・・・」
「?私の氷泪石が、どうしたの?」
「何故この色なんだ?」
「え?」
の問いに、雪菜が小首を傾げる。
しかしすぐに合点が行くと、苦笑いしながらそれに答えた。
「・・・多分、私が混血だからじゃないかしら」
「・・・・・そうなのか」
「ええ、多分だけれど・・・」
それ以外に理由が無いもの。と、雪菜が笑う。
は、ほぅと軽く声を漏らした。
「だから母や、他の氷女達は水色の石なの」
「そうだな。お前が下げている物も、透明だ」
「ええ。私だけね、その色は」
珍しいもの。と、雪菜が氷の入った茶を啜る。
も、渡されたコップを口に当て、一口含んだ。
カランと、氷が鳴る。
そう。他の氷女達が零す氷泪石は、この氷の様な色だ。
何の色も無い、無機質な。
それでも美しい、冷たい。
氷の色。
「・・・氷泪石、か」
氷の泪。
まさに、その名の通り。
「・・・?」
雪菜が流すこの泪。
確かに泪ではあるが、氷の様に無機質ではない。
優しく、暖かい。
雪の様な白濁の泪。
「・・・お前らしいな」
「え?」
の零した言葉に、雪菜が短く問い返す。
だがは答えず、再び茶を一口含むだけだった。
「・・・」
「何だ」
「・・・その色は、嫌い?」
雪菜が不安そうに問う。
は暫し考えてから、フンとソッポを向いた。
雪菜が、微笑む。
「良かった」
「煩い」
「・・・大好き」
「・・・煩い」
そっと、肩に頭を預けて来る雪菜を、特に払う事もせず。
その氷泪石の様に白い彼女の頬を、それよりも蒼白い自分の指で撫ぜた。
END.
個人的な設定。
いや、アニメでミルク色っぽい時があった様な無かった様な・・・
普通の氷女達の氷泪石は水色。作中で言うなら氷色。
混血である雪菜の氷泪石はミルク色。
紅夜が胸から下げている氷泪石も、ミルク色。雪菜の物だから。