可愛い女の子3








「ひえー。ひえー」
「・・・何だ、こんな時間にウロウロと・・・さっさと寝ろ」
「むくろはー?」
「躯なら出掛けたぞ、今日は帰らないそうだ」
「・・・・・・・・・・・・・そっか」

飛影の言葉を聞き、しょぼんと沈んで踵を返す
その様子に少し慌てて声を掛ける。

「おい、どうしたんだ。躯に何か用か」
「・・・あのね、いっしょにねてもらおうとおもったの」
「?お前いつも1人で寝てるだろうが」
「・・・そう、だけど・・・」

俯きながら言葉を詰まらせる
何かがあったらしいのは確かなので、気長に次の言葉を待ってみる。


「・・・・・・・こわい夢、みたの」


暫く待って、が呟いた言葉。

「夢・・・だと?」
「うん。・・・あのね、こわいようかいがね、いっぱいいっぱいおいかけてくるの」
「・・・・・」
「それでね、いっぱいにげたのにね、つかまっちゃうの。それで、いきてるのに、手とか、足とか、食べられちゃうの・・・」

それが怖くて躯に添い寝して貰おうと思ったらしい。
子供らしい可愛い理由だ。
だが、飛影は大して何とも思わなかった様だった。

「この要塞にお前を食おうとする馬鹿な妖怪なんざいない。寝ろ」
「・・・・・・・・・・・ひえー。いっしょにねて・・・・・・」
「何で俺が・・・」
「おねがい、おねがい。きょうだけでいいから、きょうだけ、きょうだけ・・・」
「・・・・・・・・・」

今にも泣きそうな声と顔で縋りつかれては、流石の飛影も無碍に突き放す事が出来ない。

「・・・・今日だけだぞ」
「ありがとー。ひえー」

結局、には甘い飛影だった。







の部屋に入る。
そのまますぐにベッドに向かい、寝転がるの隣に腰掛け、足にだけ布団を掛けた。

「さっさと寝ろ」
「うん。・・・ねーひえー」
「何だ」
「ひえーは、こわい夢みないの・・・?」
「そんな物は見ない」
「いいなぁ・・・」

飛影の言葉に、が小さく呟く。

「・・・・あのね、ひえー」
「何だ」
「・・・さっきの夢、ね・・・」
「・・・・・・」



「ほんとに、あったことなの・・・」



その言葉に、飛影が思わず反応する。

「何?」
「・・・のね、ママとパパがね、そーやってしんじゃったの」
「・・・・・・・・・」
「いっぱいいっぱいにげたのに、もっといっぱいのこわいようかいが追っかけてきたの。
・・・ママとパパ、食べられてしんじゃった・・・」
「・・・・・・・・・」
「だからね、そのようかいがね、こんどは、を食べにくるんじゃないかって・・・」

ポロポロ涙を流しながら話を続けるの頭を、飛影がそっと撫でる。

「もう良い」
「・・・・・」
「もしその妖怪がお前を食いに来たら、俺がそいつを追っ払ってやる」
「ホント・・・?」
「ああ。だから、もう寝ろ」
「・・・うん、おやすみ。ひえー」

髪を撫でられる気持ち良さに身を預けながら、は目を瞑る。



が怖い夢を見ない様に、飛影はずっとの髪を撫でていた。






















END.