道場に戻っても、誰も起きてなかった。
良かったぁぁぁあ・・・!!!!
ここでまた問題起こしたら追い出されるかも知んねーしな。
・・・・俺だけ。
『想華 拾参』
いやホラなんつーか、流石に女は追い出さないだろ・・・
ってか、巴は何もしてないからね。
しかも緋村さんは何だか巴に惚れちゃった腫れちゃったみたいな雰囲気だし・・・
そうだよ!!俺どうしよう!!
こう言う場合って許婚としてどうするべきなんだろうね。
・・・いや、まだ緋村さんが巴に惚れたと決まった訳じゃあ・・・
・・・・・でもさっきの様子からして、それっぽいよなぁ・・・・・
・・・こんな事考えてたらまたあの嫌な予感がせり上がって来た。何だってのコレ。
ダメだね!!もっと明るく行こうぜ!!俺!!!
「・・・?」
「ん?・・・何だよ、巴」
「まだ顔色が悪いわ。少し、横になったら・・・?」
「あ、ああ、平気平気」
「・・・・・・・・」
巴が視線で”休んでくれ”と訴えて来ている・・・
この視線に弱い。
何かこう・・・凄く心配そうな眼で見つめられると、罪悪感がこう・・・わぁっと・・・
「平気だって。それに昼からは赤べこで飯奢って貰えるしさぁ」
「・・・・・・・・」
「・・・・だ、だから、その泣きそうな顔やめてくれよ・・・・」
お前さんの泣く顔は見たくないし。
ってかこんなトコ緋村さんに見られたら今度こそ俺殺されそう!!視線で!!!
「あらさんに巴さん、どうしたの?」
ちょっとテンパッて来た所で、薫さんがヒョイと顔を出した。
襷掛けしてるから、掃除か何かしてたのかも。
「え?・・・い、いやぁ、ちょっと」
「2人共、大丈夫?何だか顔色が悪いわよ」
「いや、平気です平気です」
気にしないで下さい。
もう今夜緋村さんに事情を話して良いものかどうか悩んでるだけです。
「そう?・・・・あ、そうだ」
「?」
「もうそろそろお昼だけど・・・さんと巴さんは赤べこに行くのよね」
「え!?もうそんな時間!?」
マジですか・・・!!!
うわ、って事は俺、相当な時間考え事してた!?
自分の世界入り過ぎだよ俺!!!!
つかゴメン!!巴ゴメン!!俺ずっと無言だったしつまんなかったよな!!!
「ええ、さんたらずっとぼーっとしてるんだもの」
「あ、あはは・・・いやぁ・・・」
何だったら声かけて欲しかったり・・・。
「えーっと・・・それじゃあ、俺等、行って来ます」
「わかったわ。気をつけてね」
「は、はい。行こう、巴」
「ええ」
巴が薫さんに一礼してから、俺の傍に来る。
本当律儀な子だな・・・。
いやそれより
「あのぉ、薫さん」
「?」
「えー・・・緋村さんは、どうしてます?」
「剣心?部屋にいると思うけど・・・どうかしたの?」
「い、いえ!何でも・・・」
「?」
薫さんが首を傾げてる。
すみません別に何でも無いですすみません。
いや、ただ・・・さぁ・・・
巴と2人でいると、何だか緋村さん、怖ぇんだもん・・・
「赤べこかぁ・・・何奢ってくれるんだろうな」
「さぁ・・・でも、私は御代を払わないと」
「あ、そうか・・・・良いよ、俺の分けてやるから」
「そんな、良いの。ちゃんと頼むから」
「ふぅん」
赤べこねぇ・・・
何だろ、鍋かな。
いや、2人で鍋かよ。そりゃねぇな。
何か定食とかかな・・・別に何でも嬉しいんだけどさ。
「よっと、お邪魔しまーす」
暖簾を腕で上げて、扉を開ける。
あぁ、昨日も、この時代?に来て初めて来たのがここだったなぁ・・・
・・・なんて、思ってたら・・・
「っ!?」
「きゃあっ!!」
ギューン!と飛んで来た1人の男。
巴にぶつかりそうだったから、慌てて肩を抱き寄せて避けた。
「あっぶねーなぁ!コイツに当たるトコだっただろぉ!?」
「す、すまない・・・」
飛んで来た奴は、何だか優しそうな男だった。
ん?じゃあこの人被害者?
・・・って事は・・・
「あぁ!テメェは昨日の・・・!!!」
わーぉ。
昨日燕ちゃんに絡んでた野郎ドモ☆
5人ぐれーいるなぁ・・・あ、また燕ちゃんが絡まれてる。
「あ・・・貴方は・・・」
「よぉ燕ちゃん、またコイツ等に絡まれたのか、災難だったな」
燕ちゃんがほっとした顔した。
うん、まぁお兄さんに任せておきなさい。
・・・って、この飛んで来た人平気かな・・・多分燕ちゃん助けようとしたんだろうけど。
・・・・・・まぁ良い、今はアイツ等だ。
「テメェ・・・昨日の事ぁ忘れちゃいねぇぞ・・・」
「おーおー、尻尾巻いて逃げちゃったオニイサン方じゃねぇか。
てめぇ等そんなに燕ちゃんに遊んで貰いたいのかよ。年下趣味にも程があるぜコノヤロー」
煽るように言ってやったら、ソイツ等もう顔真っ赤!
猿みてーだなオイ。
とか思ってたら、グッと引かれる俺の服。
「ん?」
「・・・ダメ・・・」
「巴・・・」
しまった、巴がいたんだった・・・!!!
やべぇ、巴の前で喧嘩とかしたら殺される。巴に。
「お?何だテメェ、随分と別嬪な女連れてんじゃねぇかよ」
「お前にゃあ勿体ねぇなぁ・・・」
男の1人がヘラヘラと巴に手を伸ばしやがったので、スパーン!とその腕を叩いてやった。
本当なら蹴り飛ばしたい所だが、巴の目の前だし、店の中だし・・・ね。
「っ・・・テメェ!!」
「コイツは俺の許婚だ。勝手に触んじゃねぇよ」
ちょっとカッコつけてみた!!
でも本音だからね、まぁ、触るなっつー事だ。
言ってて恥ずかしいけど羞恥を感じたら負けだ!!
「この野郎・・・昨日の続きだ・・・表に出やがれ!!」
「ハッ、上等だ」
乗ってやったら、5人揃ってゾロゾロ表に出てった。
何アイツ等、ガタイの良い男が5人揃って行動してんのって奇妙だよ。
さーて、表に出る前に・・・っと
「燕ちゃん、大丈夫か?」
「は、はい・・・あ、あの、でもっ」
「俺は良いから、そこの奴の手当てでもしてやれよ」
もう伸びちゃってるよ、さっき飛んで来た奴。
「さんやったね・・・あんな大男達・・・大丈夫なん?」
「あー、どうも。・・・平気ですよ。それより・・・」
そこで区切って、俺にしがみ付いていた巴の背をトンと押す。
「コイツの事頼みます」
「!」
「平気だよ平気。怪我はしねーよ」
「、お願いやめて・・・」
「売られた喧嘩は買うモンだろ。大人しくしてろよ巴」
まだ何か言いたそうな巴と燕ちゃんを振り切って、表へといざ!!
「おっし、5人まとめて掛かって来いよ」
「この・・・調子乗ってんじゃねぇ!!」
男が大声上げたから、周囲が何だ何だと集まって来た。
うっわー。ギャラリー出現!!
更に赤べこからも何人も出てきちゃったよ!!!
わー、俺恥ずかしー!!
「ほっ」
俺の言葉通り5人で掛かって来たけど、相変わらず弱いねこのお兄さん達。
まず1人に蹴り入れたら、相当良い具合に入っちゃって、見事にK.O!!
泡吹いてるよ・・・平気かぁ・・・?
うん、恨むならジジイを恨んでくれ。俺に武術叩き込んだクソジジイに。
「こ、この野郎!!」
「お兄さん後ろガラ空きだって」
トントントン。と、2人目のツボを3箇所突いてやったら、へなっと倒れた。
コレ合気道みたいに勢い良くやると魔法みたいでカッコ良いんだけどね、うん。
ってかジジイに教わった技がこんなトコで役立つとは・・・人生わかんねーな。
・・・・・・役立っちゃダメだよこんな危険な武術!!!俺警察のお世話になっちゃうし!!!
「テメェ・・・」
「逃げられねぇぞ!!」
「ん?」
お。2人に挟まれた。
んー・・・頭使ったのか?
まぁ良い。関係ねーや。マジ負けねーよ!?
「よっ」
「「!?」」
その場で垂直に飛び上がる。
男達の頭の上にいるし、ソイツ等が俺を見失って慌ててるのがわかって笑えた。
そのまま着地際に踵のトコでスコーンと頭を踏む・・・ってか踏んでないけど、何コレ、何つーの?
まぁ良いや。不意突かれてふらついてるし、右腕で右にいた男、左腕で左にいた男の鳩尾に手刀!!
気持ち良いくらいに決まったね。音も無く倒れたよこの2人。
おし、あと1人・・・だけど・・・
「ひっ」
「おいアンタ、どうする?正直、コイツ等ここで伸ばしておくのも、邪魔なんだよね。
仲間担いで帰る?・・・それとも、アンタもここに転がってみる?」
「も、もう勘弁してくれっ・・・」
「じゃ、コイツ等担いでとっとと行け」
凄んで言ってやったら、情けない声上げて逃げてった。
ってコラァァァアア!!!!コイツ等担いでけッつっただろぉがよぉぉぉぉお!!!!
心の中でキーッと憤ってたら、周囲から暖かい拍手が。
何これ何の授賞式?それともマラソン!?俺最後尾の2時間遅れゴール!?
「良いぞ兄ちゃん!!」
「へ?あ、どうも」
「いやー、アイツ等最近悪さばっかしやがって・・・俺等も参ってたんだよ」
「そ、そうですか」
ん?コレはどう言う状況?
・・・もしや、相当目立っちゃった?
あっちゃー・・・
コレは今度散策する時に面倒だぞー!
ってかさぁ、この転がってる奴等、マジどうしよう・・・・。
「何の騒ぎだ」
「?」
クールな声が聞こえた・・・と思って見たら、制服のお兄さん。
・・・警官か?警官だよな。
「えー・・・そのー・・・」
「・・・お前は」
「へ?ええーっと・・・と、通りすがりの青年です」
「・・・・・・・」
うっわー、お巡りさん、眼ぇ怖ぇー・・・・。
だって睨まれてる!!絶対零度の視線で睨まれてる!!
・・・何だか緋村さんが俺に向けてくる視線と似てるよコレ!!!
「ああああのー・・・違います!正当防衛!正当防衛です!!」
「ほぅ」
「喧嘩っつーか、アレです。人助け!!本当ですって!!!」
「・・・まぁ良い。詳しい話は署で聞いてやる」
「っだー!!待って待ってお巡りさん!!本当!証人いるって!!!
つか俺人待たせてるんですよここの店で!!!」
グイっと腕を引かれた所で、慌ててそう叫ぶ。
お巡りさん頼むからちょっと待ってくれよジャストモーメント!!!
「だから何だ」
「話ますから!!お店の中じゃあダメですか!!!」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
あぁっ、お兄さん無言!!!
お願いだから話聞いて!!!!
「・・・良いだろう」
「へ?あ、ど、どうも!助かります!」
よ、良かったぁぁああ〜〜・・・・
俺マジ取調べされるトコだったし・・・・
てか何で人助けして俺捕まるんだよ!!!
「何を阿呆の様に突っ立っている」
「え、いや、何でも・・・!!」
お巡りさんはもう俺の手を離して暖簾に手ぇ掛けてる。
・・・・あれ?もしかして・・・・
「あのー、お巡りさん」
「何だ」
「コレってもしかして、俺が奢るとか言う場面ですか?」
「・・・何だったら、署に行くか?」
「奢ります!!」
うわーい、財布持って来て良かったー!!
・・・・・・・・・お巡りさん、勘弁して下さいよ。本当。
NEXT
お巡りさんってのは勿論斎藤さん。
面倒臭そうにご登場して頂きました。
そして主人公は相変わらず喧嘩っ早い。
だから緋村に睨まれるんだよ。巴さんに心配掛けるから。
主人公、喧嘩は強いけど考えが足りてないトコがある。