あぁ・・・とうとう来てしまったよこの時が。


心臓が珍しくドキドキしてる。


巴も同じな様で、俺の顔を不安そうに見てきた。


うん、俺もすっげぇ不安だよ・・・


・・・緋村さんに、全部打ち明けるの。











『想華 拾伍』











「あ〜・・・何だか腹痛ぇ・・・」

緊張のし過ぎで。

だってさぁ、信じて貰えると思うかぁ!!?


『俺等・・・未来から来たんですよ』


とか突然言ってさぁ!!!
コレ単に頭おかしい子だって本当!!!
巴の言う事なら何でも信じる・・・とか言ってたけど・・・
・・・絶対無理だって。

「大丈夫?」
「お、おう・・・」

全然大丈夫じゃない。
ヤバイって。
マジ本当、下手したら追い出されるかもよ。頭おかしいって。

「・・・そろそろ、行く?」
「ま、待て。緋村さんトコ行く前に、話す事まとめて置こう」
「そうね・・・」

流石にぶっつけ本番はキツイ、無理。

「・・・えーと・・・話す前にさぁ、絶対信じて下さい!って言っておくかな・・・」
「・・・・それで、信じて貰えるなら良いけれど・・・・」
「・・・まぁ、言わねーよりマシだろ・・・」
「ええ・・・」

あ、マジもう無理っぽいよ。
巴も薄々感じてるらしいし。

「・・・・・あー、考えれば考える程もうヤバイって」
「・・・それじゃあ、もう、行く?」
「・・・・・・そうするか」


ついに来たよこの時が・・・!!!!


しかしもう後には引けねぇよな。

信じて貰えなくとも、仕方ない。

取り敢えず事実だけ知っておいて貰おう。



その後の事は、その後考えれば良い。



「・・・行こう、巴」
「ええ」



巴に手を差し出し、繋ぐ。


巴の手は、少し冷たかった。












で、緋村さんのお部屋の前に到着。

アレだよね。寝起きドッキリの時みたいな緊張感がある。


あぁぁ〜〜〜ノックしたくねぇぇぇ〜〜〜


〜〜〜〜えぇいままよ!!



「緋村さん・・・夜にすみません。ちょっと、良いですか?」



実は留守にしてましたとか言うオチがあるんじゃないかとかちょいと期待してます。



「あぁ・・・構わんでござるよ」



いたーーー!!!!

俺の希望は脆くも崩れ去った!!!

・・・いや、これ以上逃げたって意味ねぇ、今日で終わらせなきゃな!!


襖に手を沿えた所で、巴に視線をやる。

巴は、しっかり見返して来た。


・・・よし。






「・・・・失礼します」






あぁぁーーー、開けちゃったよーーーー!!!!






「あぁ・・・待っていたでござるよ」
「・・・すみません」


待たせてしまって・・・・ってか待ってたんですか!?


「どうぞ、座って」
「あ、す、すみません」
「お邪魔します」


巴と一緒に、出された座布団に座る。


うっわーーー緊張して来たーーーー。

口の中乾いて来たもん。心臓の音も、やけに煩い。


「・・・教えてくれるのでござるか」
「・・・・・・はい」


あぁぁぁーーーどうしよう俺ぇぇーー!!!


・・・でも、こんな心臓に悪い事、巴に言わせらんねーし・・・


・・・・くそ!男の俺が頑張るしかねぇ!!!



「・・・・緋村さん」
「ん?」
「・・・・コレから言う事、絶対信じてくれますか」


じっと、緋村さんの顔を見遣る。


けど緋村さんは、俺より真剣な眼差しで見返して来た。


「勿論」
「・・・・・・多分今から俺が言う事は・・・信じ難い事だと思います」
「それでも」
「・・・信じてくれるんですね」
「ああ」
「・・・・・もう一度だけ言わせて下さい。
 ・・・今から言う事は事実なんです。
 ・・・・・・・・聞いて下さい」



手が、知らずに拳を作る。


握り締め過ぎて、食い込んだ爪が少し痛かった。


じっとりと、手に汗が滲む。





・・・・あぁぁぁ・・・・声震えそうだって緊張で・・・・!!!!





「ああ・・・わかった」
「・・・今から言う事、緋村さんだから、言います」
「・・・・・・・」
「巴も緋村さんの事、信頼してるし、俺もしてるから・・・」
「・・・ありがとう」


いや、つーか俺嫌われてるかも知れねーんですけどね!!!

睨まれてるし・・・・

・・・・でもさぁ、頼りに出来そうなのっつったら、緋村さんしかいねーし・・・・



「だから出来れば、他の人達には内緒にして欲しいんです」
「・・・わかった、守ろう」
「・・・・ありがとう御座います」



すっげぇ神妙な空気になった。


・・・コレはもう、本気で、後に引けないな。




ふぅっと、息を吸う。




肺がヤケに痛い気がした。




「・・・・・・」




巴の声が、すぐそこで聞こえる。



何故だろう。

何故か、巴が・・・



この事を話したら、巴との関係が、変わってしまう様な気がしてならない。



どうしてだ。

これは、今日の朝から、ずっと。

ずっと感じている、不安。



・・・いいや、気の所為だろう。



・・・・・コイツは、俺の傍にいてくれるし・・・・・





「・・・緋村さん、話す前に、質問に答えて貰っても良いですか」
「ああ、勿論」
「・・・・・・・・・・」






どうして、巴の話を信じようと思ったんですか。






・・・聞ける訳無い。


聞いた所で緋村さんはきっとはぐらかすだろう。



・・・もし素直に答えられても・・・それはそれで、困る。



・・・・・もし巴を好いているからだと言われたら・・・・・



それを聞くのは、怖い。




「・・・今、何時代ですか」
「え?」


緋村さんが意外そうに聞き返す。

あぁぁあやっぱそうですよね!!!!

でも実際コレが一番聞きたいんです!!!!

コレ聞かないと話が先に進まないんです!!!!


「・・・・今、何時代ですか?・・・・教えて下さい」
「・・・・・・・時代、と言うのは?」
「え、えぇと・・・大正時代とか・・・江戸時代とか・・・」
「・・・大正と言う年号は知らぬが、もう江戸は終わった。今は明治でござろう?」
「・・・・・・明治・・・・・・」



うっわーーー!!!!!!!


やっぱ本当に昔だった!!!!!


本当にタイムスリップしてた!!!!!!


こうして改めて聞くと何かパニくるね!!!!!



つか、明治?明治ってアレか、江戸時代の後か?

チョコレートの事じゃねぇよな?明治時代の事だよな?

っつー事は大正の前だよな?

やっべーーーまだ来てない時代の名前とか言っちゃったよオイ!!!!



「・・・・・・・そう、ですか」
殿、教えて欲しい・・・一体、年号と何の関係があるのか・・・」
「・・・・・・・・・・」



くぅぅ・・・・・・もう言うしかねぇよな・・・・・・!!!?


・・・・あぁぁくっそ!!!なる様になりやがれ!!!!!






「わかりました。・・・今から、話します」
「・・・・ああ」
「・・・・・信じて、くれるんですよね?」
「勿論」






ゴクリと、唾を飲み込む。


それがやけに大きく耳に届いて、何か気恥ずかしかった。



巴の心配そうな視線が突き刺さる。


待ってろよ、大丈夫だ。心配すんなって。



・・・緋村さんは真剣な眼で待っている。



俺も、それに答えないとな。







いつも道場でやる様に、精神を集中させる。


肩の力を抜いて、背筋を伸ばし、くっと顎を引いた。



不思議と、緊張が和らいだ気がする。







今だと感じ、思い切って乾いた口を開いた。














「俺等が未来から来たと言っても、信じてくれますか」




































NEXT


ついに言っちゃった主人公。

『拾弐』で、話す決心がついたらお邪魔します・・・とか言ってたのに。
全然決心ついてないまま話しちゃった。
巴さんと緋村の関係も気になり始めているし、どう転ぶのか。
さぁ、完璧に頭おかしい夢物語的なこの主人公の話。
緋村はどう受け取るんでしょうかね。