う〜む・・・

やりにくい。

型なんかいつもやってんのになぁ・・・。

やっぱり、薫さんの期待に満ちた視線が突き刺さってるからだろうか。。


・・・やりにくいよやっぱり!!!











『想華 伍』











しかし、やると言ったからにはやらねばならんよ。

ふふっ、わかっているさボス。


って何でやっさんみてぇな会話しちゃってんだよ俺!!


「?さん?」


うぉ。あんまり馬鹿な事考えてたら、薫さんが不思議そうに見て来た・・・。
すんません、ちょっとトリップしてました。


「え、ああ、ごめんごめん、じゃ、いきまーす」
「うんっ」


はぁ・・・・折角今日はジジイも親父もいねぇからやんなくて済むと思ったのになぁ・・・。

ま、体が鈍るから、良いんだけどさ・・・。

・・・さぁてと、やりますかな。


集中集中。


・・・俺、集中すると周り見えなくなるんだよなー・・・


















「薫さん?」


舞・・・じゃなくて、型が終わった後薫さんを見てみたら、何かぼけーっとしてた。

えー・・・頑張って踊ったのになー・・・いや、踊ったんじゃなくて型をやっただけだけども。


「えっ、あ、ごめんなさい・・・つい見入ってしまって」
「いやいや、別に・・・でもさ、俺なんかの型見てて楽しかった?」
「えぇ、とっても。すごく綺麗ね、流れる様な動きで」
「そ、そぉかな・・・」

あんま意識した事ないけど。
・・・普段からジジイに稽古つけられてっからかなぁ。

「ねぇさん」
「ん?」
さんて、剣道の心得はない?」
「剣道?」

剣道、剣道ねぇ・・・。
本格的にやった事ないな・・・。
つか寧ろ、ジジイとか親父が木刀とかで撲り掛かって来るから、自己流で応戦してるけど。

「・・・あんまないかな」
「そう・・・良かったら、そっちも見せて貰おうかな〜なんて思ったの」
「俺のなんか見てても楽しくないって」
「そんな事ないわよ」

う〜ん・・・そうかぁ?
俺は親父とかその辺が型やってても、何とも思わんがね。
寧ろムサイわぁぁあ!!ってキレる。
夏場は特に。だって道場内の気温上昇するあげく何かジメジメとするし!!
ストップ、温暖化。心のクールビズにも気を配りましょう。









「え?」

誰か呼んだ?

「・・・ああ、巴に緋村さんか」
「あら剣心・・・もう大丈夫なの?」
「大丈夫でござるよ、心配掛けたでござるな」

お、良かった良かった、体調も機嫌も良くなったっぽい。
俺も睨まれてないし!良かったぁ〜・・・。
体調悪くて機嫌悪かったのか??

、何をしていたの?」
「型やってた」
「そう・・・。ここでは手合わせする方がいないものね」
「まぁな。その方が傷出来なくて良いんだけど」
「ふふっ。でも残念だわ、が真剣に組み手をしている時は、本当に格好良いのに」
「・・・他にもあんだろ?かっこいいトコ」
「さぁ、何処かしら?」
「ひっでーなぁお前」
「冗談よ」

まぁ、いつもの事だけどさぁ・・・。
これが本気で言われてたら微妙にショッキングだね。

「う〜ん・・・でも、惜しいわね〜、剣術を嗜んでいたら、手合わせをお願いしようと思ったのに」
「おいおい薫さん・・・本気ですか」
「ええ」

薫さん、他に手合わせする人いんのだろぉか・・・。
見た所・・・門下生は、えーっと・・・そうそう、弥彦君?だけみたいだけど。

・・・何でだろ?

まぁ良いか。詮索する事でもない。









「あらヤダ、そろそろお夕飯の材料買って来ないと・・・」
「マジっすか」
「え、もうそんな時間ですか?」


気付かんかった。
・・・でも確かに空がオレンジに・・・

・・・時間て早いなぁ・・・


「って巴、ここ俺等ん家じゃねぇんだから、そんな慌てなくても良いんでない?」
「あ・・・そうだった、わね」

元の世界なら、今頃俺は稽古を終えて、巴が夕飯作ってて・・・。

・・・・あー、どっちみち大して変わんねーんだよな、俺等の世界とやってる事。

ただ文明の道具が無いのが、ちと寂しい。

「じゃあ剣心、お使いお願い」
「わかったでござるよ」
「あれ、緋村さんが行くんスか?」
「ああ、そうでござるよ」

ふーん。
・・・尻に敷かれてるのか。
ちょっと親近感沸く・・・いや、自分で言ってて虚しいから止めよう。


あ、そーだ。


「何だったら、俺行きますけど」
「「え?」」
?」
「いや、早くこの場所に慣れておきたいなーって」

その方が、帰る方法を早く探せるし。
それにンなだだっ広い訳でも無いから、迷う事はないだろう。
コレでも方向感覚結構あるし。

「でも・・・・お客様にそんな事」
「いえいえ、寧ろお世話になるんだから、コレ位やらせて下さいよ」
「・・・でも、道は大丈夫?」
「まぁ、多分」

走り回ってれば、何とかなりますよ。
とは言えんな。
余計心配掛ける。

「じゃあ・・・お願いしても良いかしら」
「ありがたいのでござるが・・・本当に良いのでござるか?」
「ええ」
「それじゃあ、お願いするわ。今日は煮魚と出汁巻き卵とお味噌汁を作りたいの。
 材料は・・・わかるかしら。お味噌とかお塩とか、調味料はあるんだけど・・・」

・・・料理しねぇんだから、わかる筈ない。
料理は巴に聞くのが一番だな。
・・・・・・いや、薫さんを疑ってるんじゃなくて、癖だ。癖。

「・・・・巴、何買ってくれば良いかわかるか?」
「煮魚は、お魚の切り身と、生姜、お醤油、砂糖、お酒、味醂。
 出汁巻き卵は・・・卵とお塩、砂糖、出汁は・・・鰹節と昆布から取れるから、それが必要ね」
「あー・・・オッケオッケ。覚えた」

塩とかはあるんだよな。
じゃあ・・・取り敢えずそーゆーの抜いたの買って来るか。
・・・結構重労働だな。

「じゃあ、コレお金ね。・・・でも、本当に良いの?」
「勿論。じゃ、行って来ます」
「あ、待って。私も行くわ」
「ん?良いよ、ここで待ってろよ」
「でも・・・」
「俺道覚える為に彼方此方走って移動するから、多分お前ついて来れねぇよ?」

多分ってか絶対。

・・・」
「待ってろって」
「・・・・」

お、何だ。珍しく食い下がるな。


・・・・もしかして・・・・


「・・・・・1人にされるの不安とか?」
「!・・・」

何だか薫さんとか緋村さんに悪い様な気がしたから、耳元で小さく言ってみた。
それと同時に、驚いた顔しながらも、小さく頷く巴。

やっぱりか。当たった。

「あはは。平気だよ、すぐ戻って来るし」
「・・・・・ええ」
「んじゃあ、行って来ますね」
「お願いね」
「頼んだでござるよ・・・」


チラリ。と、緋村さんが沈んでる巴を見る。
う〜ん・・・・やっぱり惚れた・・・・?


「じゃあ、・・・気をつけて」
「ああ」


結局、俺が首を縦に振らないから巴が先に折れた。


ごめんよ巴。帰って来たら色々話そうな。














「えーっと、魚に生姜に卵に鰹節に昆布・・・っと、酒とかはあるよなぁ」


無かったら困る。
また買出し来なきゃなんねぇし。

うん、それ以外は全部買った。

良かった・・・俺会計とか大丈夫だった・・・!!


・・・まぁ店員さんに、必要な分取って下さい。


って言っただけなんだけどね!


さぁてと、そろそろ帰るかぁ〜・・・道も覚えたし。

ずっと走ってたから、周囲の方々の訝しげな視線が痛かった・・・!








「お、お願いします、通して下さい・・・」








ん?何だ?通せんぼ合戦でもやってんのか?


って、あの子・・・さっきこべ赤・・・じゃなくて、赤べこにいた女の子だよなぁ。

何て呼ばれてたっけ・・・・・・・・・・・・・そうそう、燕ちゃんだっけか。


・・・そして周りにいる人相のとっても悪い方々&燕ちゃんの台詞・・・


絡まれてるとしか考えられんな。

うぅむ・・・今は両手が食材で塞がっててちょっと動けないんだけども・・・・

しかし、見てしまったし・・・素通りは流石に出来んし・・・・・


・・・・・・・はぁ。しょーがない。助けるか。







「あぁっとすみません足が滑りましたぁ!!!」







ドゴォッ!!と、何とも言えない派手な音を立てて俺の蹴りが男の1人にクリーンヒーット!!

つか我ながらなんてセンスのない特攻台詞!!

足が滑るとかありえないからね、こんな道端で。


「ぐぉっ」
「あ、あんだテメェ!!」
「通りすがりの青年だよ、文句あっか」

あっても困るぞ。
年齢変える訳にもいかん。詐欺はいけないぜオイ。

「あ、あ、貴方は・・・お昼に・・・」
「よぉ、燕ちゃんだよな?災難だなー、こんなムサイ人達に絡まれちゃってさ」
「ンだとテメェ!!突然喧嘩吹っ掛けてきやがって・・・嘗めてんのか!?」
「嘗めてないよ。ただただ邪魔だったから蹴っ飛ばしただけさ」
「〜〜〜っの・・・覚悟しやがれ!!」

おおー元気だな。

一斉に来たよ。


しかし、両手に夕飯の材料抱えたまま戦うってのも、新鮮ですな。


「っと」
「ぐぁっ」
「ほっ」
「うぅぅっ」
「よっと」
「うわあぁっ」


うん、弱い!

全く・・・こんな弱い癖に偉ぶってたのかよ。


「く、くっそぉ!!」
「!」
「きゃああっ」



うぉっと危ねぇ、光物かよ!

・・・あーあー。お陰で頬っぺたザックリ切れちゃったじゃんかよ。

燕ちゃんが驚いて悲鳴あげてるじゃないか。

って言うか血が飛び散ってグロイし。




「こっちぁハンデつけてやってんだぜ?それなのに光物出すってどーゆー了見?」
「はっ、莫迦かテメェ、ンなモン知ったこっちゃねぇんだよ!!」

・・・ま、それもそうか。

「全く、足技しか使えないっつーのに・・・よっ!」
「つぅっ」

ナイフ持ってる手を思い切り蹴り飛ばしたら、男が情けない声上げた。
ださいぞ。コラ。

「・・・さーて、まだやるー?」
「ちっ・・・」


お、逃げてった。

そーそー、人間諦めが肝心肝心。


「あ、あの」
「ん?ああ、大丈夫?怪我無い?」
「は、はい・・・あの、ありがとう御座いました・・・」
「いやいや」

別に梃子摺った訳でもないし。
ちょっと両手が塞がってて不便だっただけで。

「そ、その、頬が・・・す、すごい血が出てます!て、手当てを・・・」
「ん?ああ大丈夫大丈夫。すぐ治るから」
「で、でも、ダメです・・・あの、黴菌が入ったら大変ですし・・・」
「平気平気」
「で、でも、でも・・・」

う〜ん・・・この子も巴タイプだな。
大人しいのに結構頑固。
いや、可愛いけどもさ。




「燕ちゃん、どないしたん?」




おや、関西弁。

見てみれば、昼間燕ちゃんと同じく赤べこにいた人。

えーーーーと・・・・・誰だっけか。


「あら、貴方はお昼の・・・」
「あ、ども」
「まぁまぁ・・・こんな所で燕ちゃんと、どないしたんです?」
「あ、あのっ、こ、怖い人達に絡まれてた所を・・・助けて下さったんです」
「あらあら、そうだったんですか・・・・あ、怪我してはる。結構深いねぇ・・・」
「平気ですよ」
「そうはいきませんよ。手当てしないと・・・」

そのお気持ちはありがたいんですがね〜・・・。

「いえ、ありがたいんですけど、急がないと夕飯に遅れるんで」
「そうですかぁ・・・でも、やっぱり何かお礼しなくちゃ・・・」
「お礼なんて良いですよ」
「そんなんあきまへん。・・・そうだ、明日、もし宜しかったらウチへお昼食べに来て下さいな」
「え?」
「勿論、御代頂きませんし・・・ねぇ?」
「いえ、そんな・・・」
「あ、あの・・・・えっと、お願いします」
「ね?燕ちゃんも、こう言ってる事やし・・・」


う〜ん・・・弱った。

まぁ、嬉しいんだけどさぁ・・・

・・・・。

・・・・・ここまで言われて、ってか燕ちゃん頭下げちゃってるし・・・・・・・・

断るのも、逆に失礼になってきたしな・・・・・。


「・・・・ね?」
「はぁ・・・じゃあ、明日、お邪魔します」
「まぁ良かった!じゃあ、待ってますから・・・本当にありがとう御座いました」
「あ、ありがとう御座いました・・・ごめんなさい。お怪我までさせてしまって・・・」
「ん?大丈夫大丈夫、こんなん怪我に入らないって。・・・じゃ、気をつけて」


また絡まれないようにな〜!!





・・・・と、そろそろ暗くなっちまうな・・・・


急ぐか。





・・・・・げ、さっきの場所に点々と血が・・・・・!!

飛び散った時か!!!ちょっとキモイよアレ!!


うお、しかも白いTシャツが一部真っ赤に染まってるーーー!!!


あぁ・・・ほっぺからダラダラ流れてるから、左の襟元とかがもうインク零したみたいに・・・;;


この時代じゃあ、洗濯機ないしなぁ〜・・・・ハッ、代えの服ねぇじゃん!!


巴は・・・和服だから良いけどさ。





はー・・・結構深くいったんだなぁ・・・











・・・・・・・・・取り敢えず、帰ろ。それからだ。


























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