可愛い女の子






最近躯が小娘を拾って来た。
何か知らんが、その辺で野垂れ死にそうだった所を連れて来たらしい。
奴は単なる気紛れだとか言ってやがったが、その割りには自分の傍に置いて甘やかしている。
名前が無かったらしいので、躯が勝手にと呼んでいるが。
の方も躯がどういう奴だかわかっていないのか、素直に懐いているようだ。

「むくろー。むくろー。みてーv」
「ん?・・・ああ、花じゃないか、どうしたんだ?」
「あのね、きれーだったから、むくろにあげたかったのー」
「そうか。ありがとう、綺麗だな」
「えへへー」
「でも、まさか1人で行っていないだろうな?」
「だいじょーぶ。ひえーについてきてもらったよー」
「そうか、なら良い」

付いて来て貰った?
付いて行きたい訳じゃない・・・コイツを1人で行かせたら躯に殺されるからだ・・・。
大体仮にも妖怪なんだから、ちょっと位の危険など回避出来るだろうがっ。
躯の奴は超がつく過保護だな。

「あ、ひえーvv」

舌足らずな口調で、聞いてるこっちまで眠くなるような声で話しかけて来る。
ったく、もう少し滑舌を鍛えろ。

「くっつくな、離れろ」
「んー・・・ひえーあったかくてきもちーのにー・・・」
「俺は暑いんだ」
「ひえーあついの?だったらがおみずもってきてあげるー♪」

そう言って、は今にもこけそうなとろい動きで自分の部屋へ入って行った。
そのすぐ後を、躯がついて行く。
全く、本当に過保護だな・・・・・。


「ひえー。はいv」

が、コップに並々水を注いで持って来る。
今にも転びそうだな・・・。
俺が取った方が早いか。

「・・・・・・・」
「?」

の手からコップを取ると、キョトンとしたとぼけ面で俺を見上げて来る。
別に嫌じゃないが、ここまでアホっぽいと逆に脱力してしまう。
下手したら涎でも垂らし始めるんじゃないか、コイツ。

「おいし?」
「・・・・・・・・」

たかが水。
味なんか大してわかるわけでもない。
だがここで美味いと答えないと躯に何をされるかわからないので、ああとだけ答えておく。
そうすると、この単純なガキは嬉しそうにニコニコ笑う。
お手軽な奴だな。

「ひえー。ひえー。また今度”にんげんかい”にいっちゃうのー?」
「何だ突然」
「だってね。だってね。ひえーいつもいないんだもん」
「どうでも良いだろうが」
「んん〜・・・にんげんかいおもしろいの??」

面白い・・・ある意味そうなのかもな。
いや、人間界が面白いんじゃなく、あの馬鹿共が面白いだけだが。

「・・・・」

だが、ここで面白い等と答えればコイツが十中八九行きたいと駄々を捏ねるだろう。
そうなれば面倒なのは俺だ。
・・・つまらないと言っておいてやろう。

「つまらん所だ」
「?つまんないのにいってるのー??」
「・・・用事がある」
「ふぅん。・・・ねぇねぇひえー。もいきたい!」
「は?」
ね、ね、あたらしートコいってみたいのー!」

またこのガキは面倒な事を・・・!!

「良いじゃないか、連れてってやったらどうだ」
「躯・・・貴様」
「どうせお前浦飯達に会ってくるだけだろう?」
「・・・・・コイツを、連れて行けと・・・・・?」
「ああ」
「・・・・・・・・・・」

躯の奴・・・の願いとあらば何でも叶えるからな・・・。
だが、流石に人間界に行くのは憚られるのか・・・。

「・・・何があるかわからんぞ」
「お前が守れば良い」
「・・・・・・・」
「ただし」
「・・・・何だ」
「もしもコイツに怪我でも負わせたら・・・わかってるな?」

・・・・目がマジだ。
もしに何かあったら、俺が殺されるな。本気で。
腹に穴を開けられるだけじゃ済まん。

・・・チッ、だからガキのお守りは嫌いなんだ!!







「わーいvここがにんげんかい?」
「・・・ああ」

ったく・・・結局こうなるんだな・・・。
・・・面倒な連中に見つからない内に帰るか。

「おい、ここは魔界以上に危険な所だ」
「え・・・そーなの?」
「ああ、だから少し見たら帰るぞ」
「でもひえーつよいもんねvだいじょーぶだよvv」
「・・・・・・・・・・」

確かに自然発生するような三流妖怪共なら指一本でも倒せる。
だが、コイツと長くいる事でそれよりも面倒な事が起こりそうな気がする。
と言うよりも、俺の精神力がまず持たん。

「ねーひえー」
「・・・何だ」
「ひえーのおともだちいるのー?」
「・・・・そんなものは・・・・・」
「いますよね?飛影」

・・・・・・・・・・・・・・どうしてよりにもよって一番会いたくない奴に・・・っ!!

「?ひえー。おともだちー?」
「おや?この子は?・・・飛影の隠し子ですか?」
「ンな訳あるか!!」
「あはは、冗談ですよ」
「赤い髪さん、おともだちー?」
「ええ、飛影の大親友ですよv」
「しんゆーしんゆー!」
「違う」
「?ちがうのぉ?」

蔵馬・・・コイツにいらん事を吹き込むな!!!
コイツは馬鹿だから鵜呑みにするだろうが!!!

「君は?」
ー!むくろとひえーとおともだちなのー!」
「友達じゃない、お前はただのお荷物だ」
「おにもつ?おにもつ?おにもつってなぁに?」

・・・ダメだ、コイツには嫌味は通用しない。

「赤い髪のおにーさんだぁれ?」
「俺は蔵馬って言います、宜しくね、ちゃん」
「くらまー?くらまーくらまーvv」

無邪気に懐いて来るに、蔵馬は思わず暖かい微笑みを浮かべる。
・・・珍しいな、蔵馬の奴が邪気なしに笑うのは。

「可愛いじゃない、飛影?」
「・・・・知るか」

確かに、可愛くない訳じゃない。
だが、コイツといると精神力を大量に消費するんだ。

「ひえー。ひえー。おなかすいたー」
「は?・・・なら戻るぞ、戻ってから躯に食わせて貰え」
ちゃん、何だったら俺の家へ来ますか?」
「・・・蔵馬、貴様何を企んでいる」

余計な事を言うな。
何かあれば殺されるのは俺なんだぞ。
それにもう俺は帰ってゆっくり寝たいんだ。

「いえ、今日母がケーキを焼くと言っていたので」
「けーき?」
「そう、ケーキ。食べに来る?」
「いくーv」
「おい・・・」
「じゃあ行きましょうかv飛影はどうします?」

・・・・どうするも何も、行くしかないだろうが・・・・っ
・・・まぁ、躯にはどうあがいても作れない料理なのだから、食わせてやっても良いか・・・

・・・・・・・俺はコイツの父親か!?
何でこんな気を使わなけりゃ・・・・・

「ひえー。ひえー。いこーvv」

・・・・・・・・・。

・・・・まぁ、悪い気はせんがな。






















END.