今日は克哉がお休み。
外は、残念ながら土砂降りの雨。
何となく心細くて、座る克哉の膝におさまり、胸に頬を寄せる。
トクトク規則正しく聴こえて来る鼓動に、思わず眠気さえ覚える程の安堵を抱く。
まだ、朝。
克哉が作ってくれたトーストを食べて、コーヒーを飲みながら、2人でゆっくり。
克哉は私の頭を撫でながら、テレビへその綺麗な眼を向けている。
見てるのは、天気予報。
私もつられてテレビへと視線をやると、克哉が不意に聞いてきた。
「今日は生憎、夕方まで雨だそうだ」
「そっか。・・・じゃあ、今日は家でのんびりだね」
ぎゅ。と、克哉の身体に両腕を回して、一ミリの隙間も出来ないよう、くっつく。
大好きな克哉の匂い。
暖かい。優しい匂い。大好き。
子供の様に頭をコシコシと擦り付けると、克哉が優しく笑ってくれる。
そうして、私の頬を長い指先で撫ぜて、唇に触れて。
「今日は何がしたい?」
「ん?」
「一日お前に付き合ってやる、何がしたい」
いつも、休みの日は2人で散歩する。
一緒に出かけて、買い物して、時々ご飯も食べて。
手を繋いで、指を絡めて、寄り添って歩く。
とっても幸せな時間だけど、今日は2人、家の中。
出掛ける以外で、克哉は私のリクエストを聞いてくれる。
何がしたい?
こうして、一緒にいるだけで、くっついているだけで、幸せだけれど。
・・・わがまま言って良いなら、とことん甘えさせて。
「・・・キスしたい」
「一日中か?」
「うん。ずっと、キスしてたい」
私がじっと克哉の眼を見つめると、克哉はおかしそうに笑う。
一日中なんて、無理に決まってる。
でもね、それだけ克哉とくっついてたいから。
だって、克哉が私に”何がしたい”って聞いてくれたんだから。
「・・・だめ?」
「途中で音を上げるなよ」
「大丈夫、克哉になら、何されても良い」
そうか。と笑って、克哉が顔を近づけてくる。
自分の兄に向かって、あんまり褒めるのは、おかしいかも知れないけど。
本当に綺麗。綺麗過ぎて、見つめるのが照れ臭くなってしまうくらい。
髪だって。
眼だって。
肌だって。
顔だって。
全部が綺麗で、本当に私と同じ血が流れてるのかと疑いたくなるくらい。
でも。
唇の温度は、同じ。
「・・・ん・・・」
いつもは意地悪な事ばかり言う柔らかい唇が、触れる。
押し付けられて、呼吸を奪われて、舌を絡められて、声さえ噛み砕かれて。
心まで満たされるような温もりに溺れそうで、必死に克哉に縋りつく。
でも克哉は、縋る私を、更に心地好い波に溺れさせる。
「・・・かつ、や」
「何だ?」
唇を少し離して、克哉に問う。
繋いだ唾液の糸を赤い舌で千切り、その舌で私の唇を舐めながら。
その空色の瞳を零れそうな愛情に細めながら、克哉が返してくれる。
今度は一度、私から小さく控え目なキスを贈り、小首を傾げて聞いてみた。
「ねぇ、克哉は、何がしたい?」
「何だ、突然」
「いいから。克哉のリクエストも、聞いてあげる」
「そうか」
さっきまで繋がっていた唇を綺麗な微笑みに模って、克哉が頭を撫でてくれる。
あんまり気持ち良くて、ついついうっとり眼を閉じると、目蓋にキスをされて起こされた。
「俺のリクエストを聴いてくれるんだろう?」
「うん、起きてるよ。・・・何してほしい?」
何でもするよ。って、克哉に言えば、克哉は少し含んだ笑いを零す。
克哉は、私に何をしてほしい?
「そうだな・・・それなら」
克哉が、また、私へ顔を近づける。
唇が触れるか触れないかギリギリの所で。
真っ直ぐに私の眼を、同じ色をした眼で見つめながら。
とろけるような甘い声で、克哉が囁く。
「・・・キスがしたい」
私のリクエストを、そっくりそのまま返されて、ついでに唇も奪われて。
吐息を混じり合わせながら、長い長いキスを繰り返す。
小鳥の様に、啄ばむキス。
挨拶の様な触れ合わせるキス。
恋人がする甘いキス。
雨に晒された様に、熱く濡れるキス。
何度もたくさんのキスを繰り返しながら、結局、ついさっきまで使われていたベッドへ転げて。
私に覆い被さった克哉が、雨を降らす様に、私へととめどないキスを落としてくれる。
キスと、吐息と、時折漏れる互いの声に、雨の音が混ざって、とても気持ち良い。
一日中。24時間なんて、無理だけど。
せめて、雨の音が止むまでは。
貴方のキスの雨に、優しく打たれていたい。
END.
どうしてこう短編の克克は甘いのか・・・
皆様の血糖値を上げる事を目標としております。(百害あって一利なし)
可愛いおねだりに克哉さんデレデレです。鬼畜部分は何処へ!
連載でもコレくらい優しかったら良かったのに。(愛に差がありすぎる)
タイトルは『あまきす』。甘と雨を掛けてみt(説明しないで!)