書と執事

「おや執事さん、メリークリスマス。良い聖夜をお過ごしですか?」
「生憎私には、神の生誕を祝する義務も習慣もありませんので」
「そうですか。しかし偶には、人々が愚劣なまでに浮かれる中、一緒に踊らされるのも一興ですよ」
「そこまでの酔狂さを持ち合わせる程、私も若くありませんので」
「それはそれは・・・失礼を致しました」
「所で、この雪は貴方からのプレゼント・・・と言う事なのでしょうか?」
「ええ、我が王にはお気に召して頂けなかった様ですが・・・姫君は、随分とお喜びの様で」
「その様ですが、あまり感心しかねますね」
「この日くらいは、宜しいのではありませんか?私も偶には、サンタの様に無償の善を働きたくなるものです」
「貴方の様な黒いサンタには、プレゼントの代わりに悪夢を運ばれて来そうですね」
「悪夢などはお見せしませんよ。・・・そうですね、どうです?めくるめく愉悦の夢を、見たいとは思いませんか?」
「遠慮しておきましょう。・・・それこそ、”悪夢”と言うものですから」