「お前さぁ」
パチリ。と、俺が白の薄い駒を置く音が響く。
「何でしょう」
パチリ。と、古泉が黒の薄い駒を置く音が響く。
「基本的に、ハルヒの機嫌取りを優先するだろ?」
何の躊躇いも無く、俺が白の駒を置く音がする。
「ええ、貴女の事を除いては」
少々の間を空け、古泉が黒の駒を置く音がする。
「ならさ」
古泉の置いた駒を見た後、俺がまた白い駒を置く。
「はい」
俺の置いた駒を見た後、古泉は思案顔で顎に手を当てる。
「ハルヒがもしお前に惚れたら、お前はどうするんだ」
俺も待つ為、背凭れに寄り掛かり腕を組む。
「どう・・・とは?」
古泉が再び駒を取り、パチリ。と1つのマスに乗せる。
「俺と別れるのか?」
ああ、どうしてコイツはそこに駒を置くのだ。
小学生ですら、そこに置いてはならぬと解るだろうに。
そう、何の感情の起伏も無いまま思い、俺も白い駒を摘み、パチリ。と、1つのマスに乗せた。
パチ。パチ。パチ。
3つの駒を引っくり返し、白くする音が響く。
「別れませんよ」
何を当たり前な事を。
そんな色を乗せて、古泉が黒い駒を指先で弄ぶ。
何処に置くか、考えあぐねている様子だった。
「ハルヒの癇癪が起きるぞ」
俺はまた腕を組み、古泉の一手を待つ。
カチカチと時計の秒針が忙しなく時を刻む音が響いた。
「貴女と別れるくらいなら、世界の崩壊を選びます」
古泉が黒い駒をパチリと置く。
「自己中め」
珍しく良い所に置かれ、今度は俺が指先で白い駒を弄ぶ。
「自覚してます」
古泉が背凭れに寄り掛かり、腕を組む。
「でもさ」
俺が白い駒をパチリと置く。
「はい」
古泉が黒い駒をパチリと置く。
「俺がもし男で、彼女がいる状況で、ハルヒが俺に惚れているのだとわかったら」
俺が白い駒をパチリと置く。
パチパチと、2枚黒い駒が白く引っくり返った。
「お前は、俺と彼女を別れさせて、ハルヒと付き合う様に仕向けるんだろう?」
古泉が黒い駒をパチリと置く。
パチ。と、1枚だけ白い駒が白く引っくり返った。
「それは勿論」
何を当たり前な事を。
そんな色を乗せて、古泉が腕を組む。
「自己中め」
俺が指先で、白い駒を摘む。
「自覚しています」
古泉が笑う。
俺が駒を置く音は、今度は響かなかった。
END.
雨になすりつけるより短文。
古泉さんは自己中である。と言うのが書きたかった。
徒然。閑話。意味もなし。