いつものオセロ。
暇潰しにしかならない、他に利益を見出せない様な、勝ちしか見えないゲーム。
だからまぁ刺激にと思って、勝った方が命令出来る。なんて在り来たりな罰ゲームをつけてみた。
弱い古泉は、頑張ります!なんて言ってたけど、結局は俺の圧勝。
俺が白だったんだが・・・まったく、ウエディングドレスの様に、雪の様に、美しい純白に染まっているじゃないか。
何がって、盤上が。
黒はどこいった、黒。それともオセロは白い駒だけでプレイするゲームだったか。
まぁ何はともあれ、俺が勝った・・・つまり、俺が古泉に何か命令出来る訳だ。
負けた古泉はと言うと、『怖いですねぇ、何を言われるんでしょう☆』なんていつものゲロ甘スマイルで命令待ち。
なんとなーく腹が立ったので、古泉がかなり嫌がるであろう命令を、ケロリとした表情で突きつけてやった。
「罰ゲームだ。お前、これから部活終了まで敬語ナシ・笑顔ナシ・遠慮ナシの3ナシでいけ」
「はぁ!?」
古泉一樹の自棄
すでにその声が素だ。ハルヒがいるのに忘れてるな。
・・・まぁ、それで良いんだけど。俺も偶には、お前に素になって貰いたいんだよ。
此間散々俺に愚痴ってただろ。疲れただの糞ッ垂れだの畜生だの・・・もう言っちゃえよ、この場で、その言葉。
とまでは行かないが、それでも良いだろう。ずっと敬語が疲れるんだろ?
それに俺も久々にお前がずっと素で喋ってるのが見たい。ずっと素だなんて1ヶ月程見てない。
「面白そうねそれ!」
ほーら、案の定ハルヒも乗って来た。
団長様・・・お前等にとっては神でもあるハルヒ様がそう言ってんだぜ?
断れんだろう。奴の機嫌を損ねるのはお前が最も恐れている事で、奴の言葉はお前にとって何よりも優先すべき事柄の筈だ。
「それは違いますね。僕が最も恐れているのは、貴女を失う事。何よりも優先すべき事柄は貴女の事です」
モノローグに突っ込むな。
ハルヒや朝比奈さんが首を傾げてるじゃないか。
恥ずかしい事をサラリと口に出して言わない。鳥肌どころかイボ肌になる。
ってか・・・
「3ナシを忘れたか、お前」
「僕はまだやるだなんて言ってません」
「罰ゲームつけようっつったのお前だろ」
「もっと簡単なのにして下さい!!」
却下!と、腕組みをする事で古泉に伝え、ニヤリとハルヒに目配せをする。
すると奴も、俺と全く同類の笑みを浮かべ、古泉にビシリと言い放った。
「やりなさい古泉君!団長命令よ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
黙り込む古泉。ほらやっぱり逆らえねーだろ、ハルヒには。
うんうん、それで宜しい。素になってみせなさい。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
古泉がふっと俯く。
ん?と思ったのも束の間、次の瞬間には見事な絶対零度の鉄仮面を装備した古泉の顔が俺を捉えた。
うっわー・・・すんげぇドS面。
この面はアレだな。マジでブチ切れた時に見せる顔だ。今は意図的に作ってるんだろうが、見覚えあり過ぎる。
それかパラレルワールドの下衆野郎・・・もとい、俺の事を嫌いな古泉一樹君の顔によーっく似ている。
朝比奈さんは勿論、ハルヒまで固まってるよ。そりゃ固まるよな、だって怖いもん。
「・・・・な、なんだよ」
古泉が般若を背負いながら俺をじっと見詰める。ってか、睨みつける。
すっと細められた切れ長の目の奥に、苛立ちと微かな笑いが見えた。おぉっと、しまったー、鬼畜モードON!
相変わらずコイツの性格切り替えスイッチは何処に設置されているかわからない。
こりゃあすぐに別の性格切り替えスイッチを探し出して押さねば。と思った矢先だった。
古泉が俺をアイスノンみたいに冷え切った視線で見下しながら、ひっくーい声で、それでもハッキリと言い投げた。
「てめぇ、後で覚えてろよ」
・・・あー、コレ、誰が言ったと思う?
俺じゃねぇよ、古泉だよ、念の為言っとくけど。
すげー台詞、愛を感じちゃうねー・・・
ってーか素になって貰いたいとは思ったがそこまで地を出せとは言ってねーよ!!!
見ろ!朝比奈さんが恐怖の余り真っ青な顔で涙を浮かべてプルプル愛らしい小動物の様に震えてらっしゃるではないか!!!
ハルヒも心なしか蒼褪めた表情でお前を見てるぞ!お前の神が!!絶対優先事項が!!良いのか超能力者の古泉一樹君!!!
長門は本から視線を上げない、流石!!!
「おっ・・・お前っ・・・なぁ・・・!!く、口悪くしろとは誰も言って・・・」
「部活終わるまで、3ナシなんだろ?良いよ、やってやるさ」
「〜〜〜〜〜〜っっ」
仏頂面で言う古泉に、俺は何か言いたくても何を言いたいかわからず、じたじた心の中で悶えた。
確かに言った、言ったけど、なんかさぁ!!ホラ・・・さぁ・・・!!!!
俺の葛藤を知ってか知らずか、いや多分前者だ絶対前者だけど、古泉はさっさとオセロをゼロの状態に戻す。
そのまま、俺に再戦を促して来た。
「ホラ、アンタから打てよ」
「〜〜〜〜古泉!もう1度賭けだ!!もう1回勝った方がまた何か命令出来る!!良いな!!」
「良いけど、もうあんま無茶な要求すんなよ?キョン」
「ぎゃああああ!!!」
キモイ!オゾイ!!ゲロイ!!!何だその肉食系統の獰猛な笑みは!!!
それが本性なのはわかってるが此処でそこまでモロ出し丸出し無修正にガン見せする事ねぇだろ!!!
困りものですぅ☆とか言ってるあのアイドル顔からは想像つかん!!!てかそっちのがキモイけどな!!!
結局ゲームは俺の勝ちで、即刻いつものスマイルゼロ円副団長に戻りなさいと命令した。
途端に、『ふぅ、やっぱり変な感じですねぇ☆』とかニッコニコしながら言いやがったので一発ブン殴ってやった。
・・・”変な感じ”であり、”疲れた”では無い所に、コイツの本音を見た気がしなくもないが。
・・・それとこれはかなーりの余談で、それこそ蛇足の名に相応しい話なのだが・・・
この日古泉の家に泊まった時、そりゃあもう酷かった。
あの地のテンションで夜のプロレスに興じる事になったからな!!
『こっちの俺の方が良いんだろ?』なんて、お前何者なんだよ!!何人いるんだよお前!!詰襟古泉か!!?
あー・・・また、新たなコイツの一面を見てしまった・・・これも、コイツの”素”なんだろうか。
END.
いっちゃん、キョンの意地悪に自棄になって本性を剥き出す。
おおっと、コレは無修正過ぎる。モザイク必須。18歳未満観覧禁止。
家の古泉さんは性格も悪ければ口も悪い。本性は。
結構、年中エロイ事考えてる下半身野郎だと良いと思います。