お袋から、バレンタインだからとチロルチョコを貰った。
 
 
螢子から、義理だと強調されて手作りのチョコを貰った。
 
 
雪菜チャンのは、静流さんとの合作だそうだ。
 
 
ぼたんからは普通の市販のチョコ。
 
 
何でかコエンマからはチョコの変わりに仕事依頼書。クソいらねー。
 
 
幻海からは、チョコの代わりに稽古つけられた。クソ。
 
 
こう数えてみると、何か今年、わりと貰ったかも。
 
 
 
 
 
でも
 
 
何か
 
 
 
 
 
一個たんねー。
 
 
 


 
 
 
 
 
Sweet&Sweet?
 
 
 
 


 
 
 
 
「そうだ。小兎か」
 
 
 
此間、人間界に迷い込んで来た元気な実況アナウンサー。
 
明るいし結構面白いヤツで、最近ちょくちょく会ってる。
 
その度にいらん詮索を周りからされんのが、面倒だけど。
 
 
友達に会っちゃワリーんか。お?
 
 
ま、どーでも良いけど。
 
 
アイツ、こう言う行事とか好きそうなのに、珍しいな。
 
何だか完璧貰える様な気がしてた。自分でも謎だ。
 
いや、でも、何かアイツ、くれそーな気がしたから。
 
自然と、数の中に入れてた。
 
 
入って無かったけど。
 
 
 
 
 
もう夜だし。
 
 
日付変わるし。
 
 
・・・あぁ、そう言やアイツ、バレンタイン知らねーのかも。
 
 
妖怪だしな。魔界にはこんな習慣ねーだろ。
 
 
 
 
 
それ考えると納得だけど、何か腑に落ちない。
 
 
たかがチョコじゃねーかなぁ。
 
 
俺も良くわかんねーけど、小兎から貰ってみたいっぽい。
 
 
まぁた桑原とか螢子とかお袋とかぼたんとか・・・あぁもう数え切れねー。
 
 
兎に角、色んなヤツに質問攻めにされっかも。こんな事言ってたら。
 
 
 
 
 
もしかしたら来てっかなー?
 
 
と思って来てみたアイツの出て来る歪みも、何の反応もなし。
 
 
吐く息白いし、寒い。
 
 
 
諦めるかー・・・って、思った矢先。
 
 
 
 
 
 
不意に、歪みの向こうに気配がした。
 
 
 
 
 
 
すぐにわかった。
 
 
悪意の無い、何かぽかぽかした暖かい気配。
 
 
 
 
あ。と声を出す前に、その気配がずるっと出て来た。
 
 
 
 
 
 
「わぁ!幽助さん!?」
 
 
 
 
 
 
んで、驚かれた。
 
 
 
出た来たのはやっぱり、小兎。
 
 
人間界に来る時は、いつもちゃんと人間の服を着て耳と尻尾も隠してる。
 
 
今日も、例に漏れずそんなカッコだった。
 
 
 
「よぉ、小兎」
「あ、こんばんは〜。えと、どうしたんです?こんな時間に」
「そりゃ、こっちの台詞だっつぅの」
 
 
同じ歳くらいの女なんか、螢子と以外喋んねーから、コイツと話すといつも新鮮。
 
コイツは妖怪だから、年上かも知んねーけど。
 
まぁ、どーでも良い。
 
 
「やぁ〜・・・何だか幽助さんがいる様な気がしまして」
「は?」
「それで来てみたら、本当にいらしたんで・・・驚いちゃいました」
 
 
あっけらかんと笑う小兎は、ホント、同じ歳ぐれー。
 
いくつなんだか、ちょっと気になるけど。
 
 
「あ、そうだ幽助さん!」
「ん?」
「お会い出来たら渡そうって思っていたんです」
「何を?」
 
 
とか言いながら、ちょっと期待。
 
 
「どうぞ」
 
 
そんで、手に持ってた袋を渡される。
 
 
「今日は・・・何でしたっけ、人間界の行事ですよね?」
「おう。・・・何で知ってんだ?」
「暗黒武術会の時に、周りの方が仰っていたんです。
 人間界では2月14日にチョコレートと言うお菓子を、女性から男性に渡すと」
「ふーん」
「でも、魔界には日にちなんて関係ありませんし・・・
 つい確認するのを忘れていて、さっき慌てて用意したんです」
 
 
そりゃそうか。
 
わざわざ毎日確認なんかしねーだろうな。
 
俺でさえしないのに。
 
 
「それで、チョコレートと言うお菓子も無くって・・・魔界のお菓子なんですが」
「げ。平気なのかよ」
「だ、大丈夫ですよ!これ、暗黒武術会でも出されていたんですよ〜?」
 
 
ふーん。
 
微妙に不安が残るけど、まぁ良いか。
 
食えないモンは持って来ねーだろ。
 
 
「・・・サンキュ」
「いいえ、いつもお世話になっていますし・・・それに、こう言う行事好きですから」
 
 
やっぱ好きなんだ。
 
コイツ祭りとかも好きそうだなー・・・。
 
 
今度連れてってやるか。
 
 
色々と驚くだろうな。
 
初めて人間界観光した時みたいに。
 
 
「後で食うよ」
「はい!」
 
 
そう言って、小兎が笑う。
 
俺もつられて笑った。
 
 
 
そう言えば、コイツもう帰るのか?
 
折角来たばっかなのに。
 
 
 
何かつまんねーっつぅか、勿体ねぇ感じ。
 
 
 
「なぁ」
「はい?」
「お前、この後時間ある?」
「え?えぇ、まぁ、暇と言えば暇ですねぇ・・・」
「じゃ、街ブラブラしようぜ」
「え??」
「夜の街って、お前歩いた事ねーだろ?」
「・・・あぁ、そうでしたねぇ」
 
 
いつもコイツが来るのは昼間。
 
夜なんてのは、初めて探索した日の帰り道だけ。
 
しかも、この歪みを探す為だけだったから、かなり短い距離。
 
 
偶には、ちょっと危ない夜の街なんかも、良いと思う。
 
 
「でも、ちょっと怖いですねぇ」
「妖怪が何言ってんだよ・・・それに、酔っ払いが絡んで来たらぶっ飛ばせば良いじゃねぇか」
「ゆ、幽助さんが一般の人間の方を殴ったら、死んじゃうんじゃぁ・・・」
「平気だよ、加減するから」
 
 
コイツも意外と失礼だな。
 
本気で殴る訳ねーっつぅの。
 
 
「で?どーすんの。行くのか?」
「あ、はい!是非」
「んじゃあ、行こうぜ」
 
 
 
 
何となく自然に小兎の手を握って、引っ張る。
 
 
何で握ってんだろ?
 
 
自分でも謎だけど、何かふつーに手を取った。
 
 
小兎も別に嫌がったりしねぇし、何かどーでも良いや。
 
 
 
 
 
 
繋いだ掌が、冬なのに汗ばんでるのは、きっと小兎の手がぽかぽか暖かいからだな。
 
 
 
 
 
 
多分、そうだ。
 
 
 
 
 
 
別に、どうって事は、ない。
 
 
 
 
 
でも何か
 
 
 
 
 
今日はバレンタインだからか
 
 
 
 
 
妙に緊張している気がした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
END.

2007/2/14。
本日、バレンタインデーで御座います。
友チョコ交換以外特に劇的なドラマも無く、静かに過ごしました。
・・・にしてもコイツ等、ちっとも進展ありませんね。