例えば苦手な教科の難しい問題に当たった時。


俺が答えに詰まっていると、こっそりアイツがノートをズラす。


反射的に目だけで見てしまったら、綺麗な字で書かれた答えが視界に飛び込んで来て。


チラリと目を上げアイツの顔を見ると、ニッコリ笑っている。



ああ、コイツなんか嫌いだ。



例えば体育の時間。


一緒に組むと、大体アイツは俺を勝たせない。


いや、勿論わざと負けられる方がよっぽど腹立つけど。


それでも偶に、指導する様に俺を勝たせて来る時がある。


落ち着いて。とアドバイスを送りながら、ニッコリ笑っている。



ああ、コイツなんか嫌いだ。



例えば音楽の授業が終わった後。


ピアノの前に座りながら、何かリクエストは?と聞いてくる。


そこで少し難易度の高い曲を言ってみても、アイツは見事に弾いてみせて。


うっかり聞き惚れた俺に向けて、ニッコリ笑っている。



ああ、コイツなんか嫌いだ。



例えば一緒に昼食を取る時。


俺に作ってくれた弁当を差し出しながら、お口に合えばとアイツが言う。


俺も時々料理はするが、アイツの方が包丁の扱いも味付けも、果ては盛り付けまで上手だ。


手際も良いし、何より作業が早かったりする。


俺の好物を入れておきながら、美味しいですか?と小首を傾げて、ニッコリ笑っている。



ああ、コイツなんか嫌いだ。






考えてみれば、アレも嫌い。


もう少し考えてみれば、コレも嫌い。


更に考えると、あそこも嫌い。


ああ、アイツの事を見ていると、嫌いな所ばっかりだ。






「でも、そんな所も全て含めて、好きになって下さったんでしょう?」






そうやって、隠しておきたい俺の本心をアッサリ見抜いて。


さも当たり前の様にニッコリ笑っている。




ああ、そんなコイツの嫌な所全部、好きだと思える俺が、大嫌いだ。




























END.

結局ベタ惚れの小狼君ととっくに承知のエリオル君。
エリオル君は基本優位だけど、ある一定のラインを超えると逆転する。
主にセクシャル関連は、何故か年下の小狼君リードだと良い。
それを『悪くない』とか思っちゃうエリオル君も、十分惚れてます。